研究領域 | 超地球生命体を解き明かすポストコッホ機能生態学 |
研究課題/領域番号 |
19H05685
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大西 康夫 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (90292789)
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研究分担者 |
稲橋 佑起 北里大学, 感染制御科学府, 講師 (70645522)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 希少放線菌 / 菌株単離 / 二次代謝 / 生合成酵素 / 形態分化 / Actinoplanes / 胞子嚢 / 遺伝子発現制御 |
研究実績の概要 |
(1) モデル圃場を含む分離源からの希少放線菌の分離 2019年度に引き続き、従来法に工夫を加えた分離法として、(i)リゾチーム添加、(ii)抗生物質前処理を行い、(i)では137株、(ii)では66株の希少放線菌を新たに分離した。このうち、モデル圃場からの分離株は16株であり、全分離株のうち、新規性が高いと考えられる株は9株であった。一方、96穴マイクロプレートを用いて、他の菌株と物理的に隔てた培養によって、実際に生育が遅い希少放線菌株を単離できることを示した。さらに、昨年度の結果を受け、マイクロ培養アレイシステムの改良に取り組んだ結果、196ウェルのものを使用し、寒天中に菌液を混ぜ込んで使用する混釈法を採用する工夫によって菌株の分離が可能になった。 (2) 希少放線菌の新たな生理機能の解明 これまでに単離した希少放線菌のうち、新規性が高いと考えられる株のうち生育が早い6株について、PCスクリーニングを開始し、うち5株で新規と考えられる化合物の生産を確認した。一方、6株中の5株についてはゲノムを抽出し、ゲノム配列解析に外注した(2021年5月中に結果が得られる予定)。一方、モデル希少放線菌Actinoplanes missouriensisの研究においては、胞子嚢マトリクス多糖の合成に関与すると考えられた遺伝子クラスターの破壊株で胞子嚢マトリクス多糖が合成されていないことを強く示唆する結果が得られた。さらに、胞子嚢壁の最外層にトリアシルグリセロールが含まれることをリパーゼ処理した胞子嚢の透過型電子顕微鏡観察により示すとともに、顕微ラマン解析によるトリアシルグリセロールの局在部位解析を開始した。また、原子間力顕微鏡による胞子嚢の表面構造解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
96穴マイクロプレートを用いた実験により、他の菌株と物理的に隔てた培養によって生育が遅い希少放線菌株を実際に単離できることを示すことができた。さらに、希少放線菌の単離に利用できるマイクロ培養アレイシステム(196ウェル)を開発することができた。一方、従来法に工夫を加えた分離法によって、新たに合計203株の希少放線菌の分離に成功した。一方、コロナ禍によって計画よりも遅れたが(結果が得られるのが2021年5月となる見込み)、新規性が高いと考えられる単離希少放線菌5株のゲノム解析を行うことができた。また、これらの株を含む6株についてPCスクリーニングを行い、うち5株で新規と考えられる化合物の生産が確認できた。モデル希少放線菌の研究においては、胞子嚢マトリクス多糖の同定は昨年度同様、難航しているものの、その調製方法に目処が立つとともに、その他の解析でも、いくつかの重要な進展が見られた。以上の結果より、研究計画全体は、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロ培養アレイシステムは196ウェルのものを使用し、寒天中に土壌希釈液を混ぜ込んで培養する混釈法を採用する工夫によって菌株の分離が可能になったが、96穴マイクロプレートを用いた実験より操作性が劣った。なお、96穴マイクロプレートを用いた場合、他の菌株と物理的に隔てた培養によって生育が遅い株を単離できることが示された。今後、マイクロ培養アレイの利用は、底のない196ウェルアレイを用いて共培養システムを開発していくことに重点をおく。一方、ゲノム配列解析に供した5株については、ゲノムマイニングおよび様々な培養条件でのPCスクリーニングを行い、新規生合成遺伝子クラスターの解析を行うことで、機能未知遺伝子の機能解明に繋げる。一方、モデル希少放線菌に関しては、胞子嚢マトリクス多糖の構造決定、その生合成酵素の機能解明、胞子嚢壁のトリアシルグリセロールの合成と分解に関与する酵素の同定と機能解析に重点をおきつつ、ダイナミックな形態分化の分子機構に関する研究を行う。一方、遊走子からの発芽というプロセスに着目して新たな研究を開始する。具体的には、発芽時において特異的に転写される遺伝子の機能解析を遺伝子破壊により行う。
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