研究領域 | 超地球生命体を解き明かすポストコッホ機能生態学 |
研究課題/領域番号 |
19H05689
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
大熊 盛也 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 室長 (10270597)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
|
キーワード | 微生物資源 / 難培養微生物 / 共生微生物 / バイオリソース / 分離培養 / 微生物生態 / 生物多様性 |
研究実績の概要 |
分離培養された難培養微生物や新種微生物を多数受け入れ、確実に保存・維持・品質管理を行い、付随情報の充実で付加価値を向上させて、一般の研究者に利用できるように整備することで、関連分野の研究や社会への貢献をめざしている。そのための体制は確立し、これまでに整備したリソースの提供で多様な分野の数多くの研究者に利活用いただいて研究に貢献している。領域内外・国内外の連携も推進して未知種の同定や多面的解析を行って、数十の新種微生物を発表した。新種の記載の条件となったゲノム情報に基づく種間の相同性の比較解析も合わせて報告しており、解析ゲノム情報は一般に公開している。 多様な微生物リソースの提供、それらの培養、新種記載のための試験、シングルセルの分離や解析等で領域内の複数の研究者の研究を支援して多くの成果発表に結びついている。共生系・複合系の微生物、難培養微生物の整備に向け、嫌気的な培養が必要な腸内細菌や極限環境に生息するアーキアなどを対象に、分離培養を自らも実施し、培養に成功したものはゲノム情報も解析した。異種微生物の共培養により生育する共生微生物の分離培養も行って、培養例が極めて少ないDPANNグループに属する絶対共生性のアーキアの共生培養にも複数例で成功した。培養されたDPANNグループアーキアの1種は新門を提唱したが、特定の宿主とのみ共生するというこれまでの常識をくつがえし、複数のアーキア種を宿主として生育できることを明らかとした。多様な生態系に生息するための生存戦略に迫る画期的な成果と考えている。シングルセルゲノム解析法の高度化のために開発したマイクロカプセルを用いた新技術は、共生微生物の分離培養にも応用可能で、既存の共生培養系を用いてその有用性を実証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
難培養微生物や共生微生物など、ポストコッホ型の微生物分離株の受け入れを推進しており、順次リソースとして利用可能に整備しており、そのための運営体制に問題はない。最近新種の記載のための条件となったゲノム情報解析も、解読ゲノムの情報解析技術やゲノムレベルでの分子系統解析の経験を積んでおり、従来の生理性状・化学分類の手法も適用可能で、領域内外の数多くの研究者との連携により、多くの新種記載ができている。領域内の研究者に微生物の同定分類、リソースの培養と提供など、研究支援・連携も順調で、成果発表に貢献していると考えている。また、難培養で未知の系統の共生系の微生物の分離培養や解析も進んでおり、今後の成果も期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
研究推進方策に大きな変更はない。分離培養を実施した研究者と連携を密にし、培養後の細胞量が十分でない難培養微生物については、培養条件の最適化や確実な保存方法を検討する。性状や機能、ゲノム、生態や分離条件、培養条件等の関連した付随情報を収集・整理し、これらの情報と合わせて収集したリソースは一般に公開して提供可能に整備する。難培養微生物や共生微生物、未知の微生物の分離培養について、継続して自らも積極的に実施して微生物リソースとして整備し、論文発表をめざす。シングルセルゲノム解析の高度化の目的で開発したマイクロカプセル技術を適用した分離培養も試みる。新種候補の微生物種については、領域内外の研究者と連携しつつ、生理性状やゲノム情報解析をはじめとして多面的に分類学的に精査して、可能な限り新種として記載する。共培養系として得られたものは、培養性状やオミックス解析により、共生機構や宿主特異性について解明をめざす。また、培養技術や多様なリソースに基づき、領域内の連携を深め、領域研究を積極的に支援する。
|