計画研究
本課題では、中緯度大気海洋結合系の基盤をなす海洋前線帯の形成・変動の理解を更に進め、その予測可能性を明らかにすることを目標とし、今年度、以下のような成果を得た。気象庁で台風の強度予報に用いる重回帰モデルに基づく統計ガイダンスでは、海洋に関する説明変数として海面水温と海洋表層の貯熱量を使用している。現在のガイダンスでは、海面水温と海洋貯熱量は予測開始時の値に固定されており、台風に対する海洋の応答が考慮されにくい。そこで海洋モデルで予報した海面水温と海洋貯熱量を用いることで台風と海洋の結合過程を考慮した「疑似海洋結合」システムを開発し、2020年の全台風を対象に予測実験を行った結果、3-5日予報が10%程度改善することが示された。気象庁で実際に用いるシステムを基盤にした実験で定量的な改善が示された意義は大きい。一方、海洋前線帯と海洋中規模渦の変動とその予測の可能性を明らかにするため、前年度開発した渦解像海洋再解析データを初期値として海洋変動を予測するシステムを開発し、1994-2020年の各年1月から3年先までの予測実験を実施した。その結果、黒潮続流とメキシコ湾流の流速とそれぞれの下流域の海洋渦の活動度の経年変動を1-2年先まで高い精度で予測可能であることが示された。また、より長期の変化として、黒潮続流が過去29年間で約200km北上していることを人工衛星観測データから解明した。大気の長期的な変化を調査した結果、黒潮続流の緯度帯以北において、風応力カールが負のトレンドを持つことが示された。この風系のトレンドは海洋の亜熱帯循環とその北端に形成される黒潮続流の北上と矛盾しないものであり、実際、数値シミュレーション実験から風系のトレンドが黒潮続流の北上を生じさせることが示された。以上のように、海洋前線帯の変動とその予測可能性について、その理解を進め、定量的に示すことに成功した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 3件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 11件) 学会発表 (39件) (うち国際学会 23件、 招待講演 3件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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