研究領域 | 変わりゆく気候系における中緯度大気海洋相互作用hotspot |
研究課題/領域番号 |
19H05704
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
見延 庄士郎 北海道大学, 理学研究院, 教授 (70219707)
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研究分担者 |
増永 浩彦 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (00444422)
杉本 周作 東北大学, 理学研究科, 准教授 (50547320)
佐々木 克徳 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (50604815)
時長 宏樹 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (80421890)
釜江 陽一 筑波大学, 生命環境系, 助教 (80714162)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 大気海洋相互作用 / 地球温暖化 / 中緯度 / CMIP6 / HighResMIP / d4PDF / 衛星データ |
研究実績の概要 |
EUのHighResMIPプロジェクトであるPRIMAVERAのデータを、同プロジェクトと本新学術領域の連携を活かして解析し、爆弾低気圧の個数が高解像度モデルほど増加することを明らかにした論文を出版した。対流放射平衡大気の数値実験でしばしば見られる対流自己凝集化を、衛星観測により検証した。現実大気でも対流自己凝集化に対応する現象が確認されたが、理想化実験に比べ時間スケールが顕著に短いなど注目すべき違いも認められた。大気再解析データより、北米大陸気候へのベーリング海海氷の影響を明らかにし、CMIP6データから同海氷の将来変化について提示した。2017年夏から発生した黒潮大蛇行期間での黒潮続流・大気大循環場の特徴を大気再解析データの統計解析から記述した。20世紀の東シナ海の温暖化を調べるために領域海洋モデルを用いた解析を行った。その結果、温暖化は黒潮流軸と大陸棚上で大きく、そのメカニズムは海洋循環の変化であることが判明した。CMIP6/HighResMIP 高解像度大気海洋結合モデル出力データを解析し、太平洋十年規模振動に伴う大気海洋相互作用の再現性を検証した。その結果、海面熱フラックス偏差の南北ダイポール構造が黒潮続流前線に沿って形成され、アリューシャン低気圧との双方向相互作用を通して、太平洋十年規模振動のライフサイクルに重要な役割を果たしている可能性を突き止めた。高解像度モデル出力を用いた極端現象とそれをもたらす総観規模擾乱の変動に関する研究に取り組んだ。低気圧追跡手法を用いることで、日本上空を通過する二つ玉低気圧とそれに伴う大気の川の流入による降雨や降雪の傾向を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画研究では、CMIP6/HighResMIPの解析を国際協力の下で進めることを重要視している。この解析を新型コロナウイルス問題が継続する中で効果的に進めるために、EUのHighResMIPプロジェクトであるPRIMAVERAとHotspot2とで連携することを2020年4月のPRIMAVERA全体会合で提案し了承を得、これによって本新学術領域研究の研究者がPRIMAVERAデータを格納している英国のJASMINサーバー上で直接解析することが可能となった。また、2020年10月に海外経験も豊富な特任助教を雇用することができ、気象現象の中でも社会的に重要な台風についてのHighResMIPデータ解析研究を開始した。ハワイ大学との共同研究で日本気候への黒潮大蛇行の影響を定量化するために数値実験を実施した結果、水蒸気変化を通じて関東周辺の夏の猛暑に影響することを明らかにした。海洋観測資料解析により日本南東沖冬季混合層深度が過去60年間で約6%浅化していることを明らかにした。東シナ海の温暖化への大気応答を調べるためにHighResMIPのデータの解析を開始した。20世紀の東シナ海の温暖化の研究結果は国際誌に投稿し受理された。CMIP6/HighResMIP 高解像度大気海洋結合モデル出力データの整備と解析作業を進めている。得られた成果は2021年6月に開催される国際ワークショップにて発表する予定である。高解像度モデル出力を用いた極端現象とそれをもたらす総観規模擾乱の変動に関する研究成果を、オンライン国際会議や国内現地学会で幅広く発表している。
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今後の研究の推進方策 |
英国のJASMINサーバー上のデータを解析するだけでは、保持可能なファイル容量の制約などから十分な解析ができない場合もある。そこで、研究補助者を雇用してHighResMIPデータの取得も(ダウンロード)進めて行く予定である。またHighResMIPデータなどの高解像度データを効果的に解析するために、大学院生の研究協力者も使用しやすい低気圧トラッキング・プログラムを開発する。日本南東沖冬季混合層深度変化の不確実性を検討するためにCMIP6マルチモデル解析を実施し、その解析から今世紀末までの海洋混合層変化の将来変化を解明する。日本夏季気候のさらなる理解に向け、CMIP6を用いることで、南シナ海、大西洋からの遠隔強制の影響、およびその将来変化について明らかにする。領域大気モデルや、HighResMIPのデータを持ちいて東シナ海の温暖化への大気応答について解析を行う。特に梅雨前線に注目した解析を行う。本年度はCMIP6/HighResMIPモデルのマルチモデルアンサンブル平均に対する解析を中心に行った。次年度以降はモデルによる不確実性を評価するため、各モデルにおける熱帯太平洋から北太平洋への遠隔影響や、黒潮親潮続流域の前線構造に着目し、それらとPDOの再現性との関連性を調べる計画である。CMIP6、d4PDFのデータを用いて、日本を襲う極端降水や極端降雪が地球温暖化でどのように変化するかの解析を進める。大気の川に伴う極端現象が地球温暖化で変化する様子を明らかにし、研究成果をまとめる。
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