研究領域 | マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解 |
研究課題/領域番号 |
19H05708
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中戸川 仁 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (90414010)
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研究分担者 |
大隅 良典 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 栄誉教授 (30114416)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | オートファジー / マクロオートファジー / ミクロオートファジー / タンパク質分解 / オルガネラ分解 |
研究実績の概要 |
マクロオートファジーは、様々な細胞成分を“オートファゴソーム”と呼ばれる二重膜胞内に隔離し、リソソーム/液胞に輸送し、分解する。本計画研究では、(1) マクロオートファジーにおける膜動態を支えるメカニズム、(2) マクロオートファジーにおける新たな分解基質選択機構、(3) マクロオートファジーとミクロオートファジーの連携の解明を目的としてる。以下に令和元年度に得られた代表的な成果を列挙する。 (1) マクロオートファジーにおける膜動態の解明:PI3K複合体IがAtg1複合体及びAtg9と相互作用することを見出し、これらの相互作用がPI3K複合体Iのオートファゴソーム前駆体への局在化に重要であることを明らかにした。 (2) マクロオートファジーにおける新たな基質選択機構の解明:BARドメイン及びPI3P結合ドメインを持つAtg24が形成する複合体は隔離膜の開口端に局在化する。野生株及びATG24欠失株からオートファジックボディを単離し、質量分析により内部のタンパク質を網羅的に解析、比較し、Atg24複合体に依存してオートファゴソームに取り込まれる成分を特定した。また、モデル基質を用いた解析から、Atg24複合体は約20 nm以上の粒子のオートファゴソームへの取り込みに重要であることを示すことができた。 (3) マクロオートファジーとミクロオートファジーの連携:ATG39を破壊してマクロヌクレオファジーを停止させると、ミクロヌクレオファジー関連因子Nvj1の量が上昇し、ミクロヌクレオファジーが異常昂進することにより細胞が死に至ることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の3つの成果については、論文執筆の準備を進めている。一方で、いくつかの計画においては予定通り進んでいない項目もあるため、全体として本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) マクロオートファジーにおける膜動態の解明:Atg9 及びAtg23の相互作用因子を同定、解析し、Atg9小胞の形成機構を解明する。Atg9小胞形成の試験管内再構成にも挑戦する。Atg9小胞上でPI3K複合体IがPI3Pを産生する可能性を検証する。Atg2 複合体と相互作用する小胞体タンパク質の同定及び、セミインタクト細胞での隔離膜伸張を目指して研究を進める。 (2) マクロオートファジーにおける新たな基質選択機構の解明:Atg24複合体欠損細胞において実際に隔離膜の開口径が小さくなることを電子顕微鏡解析などにより証明し、これまでの成果と合わせて論文にまとめる。 (3) マクロオートファジーとミクロオートファジーの連携:窒素飢餓条件でマクロヌクレオファジーが欠損が、ミクロヌクレオファジーが異常昂進を引き起こし、細胞死を引き起こすことを明らかにした。さらに解析を進め、成果を論文にまとめる。また、マクロヌクレオファジー欠損細胞における核-液胞コンタクトサイト(ミクロヌクレオファジーが起こる場)の機能変化についても調べる。さらに、ミクロヌクレオファジー欠損細胞におけるマクロヌクレオファジーの活性変化についても解析を進める。 (4) オートファジーによるタンパク質分解の総合的理解:昨年に引き続き、様々な飢餓条件に置いた細胞からオートファジックボディを単離し、質量分析により内部の分解基質を網羅的に同定し、細胞質画分との比較により各タンパク質の選択性ついて解析する。
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