研究領域 | マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解 |
研究課題/領域番号 |
19H05710
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
株田 智弘 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第四部, 室長 (70535765)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | オートファジー / RNautophagy / 神経変性疾患 / ポリグルタミン病 |
研究実績の概要 |
計画通りRNautophagyとDNautophagy (RDA)について研究を行なった。核酸受容体LAMP2C欠損リソソームではSIDT2を介するRDA活性があることから、SIDT2も核酸と結合するという仮説を立てて研究を進めた。その結果、SIDT2は細胞質ドメインのC末端側部分に存在するアルギニンリッチモチーフ(ARM)を介してRNAとDNAと直接結合することを明らかにした。SIDT2は基質核酸に対してLAMP2Cと同様な選択性を有し、poly-G/dGと結合し、poly-A/dA, poly-U, poly-dT, poly-C/dCとは結合しないことを見いだした。また、ARMを介したSIDT2とRNAの結合はSIDT2を介するRNautophagy活性に必須であることを示した。さらに、SIDT2の細胞質ドメインは、ARMを介してCAGリピート依存的にハンチントン病の原因遺伝子であるHTT (huntingtin)のmRNAと結合することを見出した。SIDT2の過剰発現はHTT mRNAの分解を促進し、HTT凝集体量を減少させた。細胞レベルにおいてLAMP2CとSIDT2の機能比較分析を行ったところ、これらのタンパク質はRNautophagy活性に対して相乗的に機能した。またSIDT2とLAMP2CそれぞれのARMは、この相乗効果に不可欠であることも明らかにした。以上、核酸が脂質二重層を透過させる上でSIDT2の核酸との結合能の重要性を示した。また、神経変性疾患の原因となるタンパク質の量を低下させるためにRNautophagyの活性化が応用できる可能性もある。一方、プロテオリポソームとナノポア技術を用いて再構成系を構築し、人工脂質膜上でSIDT2がポアを形成するかについて解析を行い、研究継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載した通り、計画通り順調に研究が進展した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)核酸のリソソーム膜透過装置の解明 前年度と同様プロテオリポソームとナノポア技術を用いて再構成系を構築し、人工脂質膜に形成したSIDT2ポアを核酸が通過するかについて解析し、SIDT2が核酸膜透過装置の実体であるか検証する。 計画班野田班と連携し共同研究によりSIDT2ポアの構造解明 (X線構造解析やクライオ電顕)に向けた準備を開始する。 (2)RDAの分子機構・制御機構の解明 ・リソソーム膜の核酸通過に必要なエネルギー(ATP)消費メカニズム RDAにはATP消費が必要であることから、何らかのATPaseが必須の役割を果たしている。またATPは核酸の膜透過に必要なエネルギーとして消費されていると推測される。現在ATPaseに関しては2 つの可能性を考えている。①前述のナノポアシークエンス技術では、helicaseとポア形成タンパク質を用いて膜透過装置を作製していることから、RDAにおけるATPaseの1つ目の可能性はhelicaseである。そこで、既報のプロテオミクスの論文を参考に、リソソームに存在するhelicaseを選び出す。それぞれのhelicaseをノックダウンした際のRDA活性を測定することなどにより、RDAに関与する、または必須のhelicaseを同定する。②もう1つの候補はSIDT2である。この可能性については、精製SIDT2を含むリポソームを作製し、ATP結合能・消費能の有無を解析する。さらに、上記項目(1)の実験系においても機能を解析することにより、膜透過に必須なATPaseの同定を目指す。
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