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2019 年度 実績報告書

動物発生における細胞膜分解の分子機構とその生理機能

計画研究

研究領域マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解
研究課題/領域番号 19H05711
研究機関群馬大学

研究代表者

佐藤 健  群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (30311343)

研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2024-03-31
キーワード細胞膜分解 / エンドサイトーシス / 受精 / 卵
研究実績の概要

まず線虫の初期胚において細胞膜タンパク質等の動態を観察するため、CAV-1-GFPに加え、線虫における精子レセプターであるEGG-1、PatchedホモログであるPTC-1、葉酸受容体ホモログであるFOLT-1等にGFPを融合したタンパク質を生殖腺において発現する遺伝子組み換え線虫を作製し、受精前後におけるこれらの細胞内に動態について解析を行った。その結果、EGG-1、PTC-1は受精後にエンドサイトーシスされ分解されるのに対し、FOLT-1は受精後も細胞膜上に検出された。このことから、卵母細胞膜タンパク質の中にも分解されやすいものとされにくいものの選択性があることが明らかとなった。また、線虫の受精前後から初期発生過程にかけて長時間・高解像ライブイメージング観察を行う条件を検討し、タンパク質やオルガネラの動態を卵の成熟から胚発生まで非侵襲的に観察できる系を構築した。さらに、細胞膜分解関連因子を探索するために、CAV-1-GFP発現線虫に対してRNAiライブラリーを用いた網羅的スクリーニングを行ったところ、発現抑制するとCAV-1-GFPが初期胚において後期エンドソームに蓄積し、分解されなくなる新規因子を同定した。この因子の阻害により、後期エンドソームが肥大化しユビキチン化タンパク質の蓄積も観察されたことから、受精後に後期エンドソームの活性を制御する因子であることが示唆された。一方、マウス卵においてもタンパク質やオルガネラの動態を受精前後から胚盤胞期まで非侵襲的に高解像ライブイメージングする観察系を確立した。また、マウスの未受精卵を多量に採取し質量分析を行うことにより、未受精卵に発現する多数の膜タンパク質の同定に成功した。現在、マウス卵の細胞膜に存在するCD9やアミノ酸輸送体等の受精前後における動態に着目し、研究を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

線虫及びマウスの初期胚発生過程を非侵襲的かつ高解像でライブイメージングする実験系の構築に成功しており、受精前後における細胞膜タンパク質分解の素過程を捉えることに成功しつつある。線虫においては受精後の細胞膜分解に関わる新規因子の網羅的スクリーニングにより複数の候補因子を同定しており、今後これらの解析を通じて分子メカニズムが明らかになることが期待される。一方、マウス卵においては未受精卵タンパク質の質量解析により、多数の膜タンパク質の同定に成功している。今後、これらのうち細胞膜タンパク質に焦点をあて、受精前後における細胞内動態や分解過程を明らかにすることにより、種を超えた細胞膜分解メカニズムが明らかになると思われる。

今後の研究の推進方策

(1) 線虫の初期胚におけるリソソーム分解系活性化プロセスの解析
前年度に引き続き、初期発生過程における細胞膜タンパク質やオルガネラの動態を観察するためのモニター動物の作製を行う。特に初期発生の時間軸に沿ったリソソーム分解系活性化を観察するために、エンドサイトーシスによる細胞膜分解とオートファジーの活性化を同時に観察可能なモニター動物を構築し、長時間・高解像ライブイメージングを行い、リソソーム分解系活性化プロセスを明らかにする。
(2) 線虫の卵母細胞膜分解に関与する因子の探索と解析
前年度に単離した卵母細胞膜タンパク質の分解に関わる候補因子について、定法にしたがい、解析を行う。まずRNAi法により遺伝子ノックダウンを行い、CAV-1-GFPだけではなくその他の細胞膜タンパク質の分解や動態にも関与するのか、検討する。また、候補因子に蛍光タンパク質を結合した融合タンパク質を発現する線虫の構築や抗体の作製を通じて、受精前後における細胞内動態について解析する。さらに、候補因子の遺伝子破壊株を獲得し、その表現型について詳細に解析する。
(3) マウス配偶子及び初期胚における長時間高解像ライブイメージング解析
前年度の条件検討の結果、蛍光タンパク質で標識されたオルガネラタンパク質の挙動をマウス卵において低侵襲的かつ高解像度でライブイメージングする系の確立に成功した。そこで本年度は、線虫およびマウス受精卵における各オルガネラの動態解析によって得られた情報を集約し、発生の時間軸に沿った細胞膜タンパク質と各オルガネラの4次元マッピングを行う。また、これらの解析により、マウスの発生の時間軸における細胞膜分解系とその他のオートファジー分解系の活性化のタイミングを明らかにする。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Structural insights into tetraspanin CD9 function2020

    • 著者名/発表者名
      Umeda Rie、Satouh Yuhkoh、Takemoto Mizuki、Nakada-Nakura Yoshiko、Liu Kehong、Yokoyama Takeshi、Shirouzu Mikako、Iwata So、Nomura Norimichi、Sato Ken、Ikawa Masahito、Nishizawa Tomohiro、Nureki Osamu
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 11 ページ: 1606

    • DOI

      10.1038/s41467-020-15459-7

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Synthesis and maintenance of lipid droplets are essential for mouse preimplantation embryonic development2019

    • 著者名/発表者名
      Aizawa Ryutaro、Ibayashi Megumi、Tatsumi Takayuki、Yamamoto Atsushi、Kokubo Toshiaki、Miyasaka Naoyuki、Sato Ken、Ikeda Shuntaro、Minami Naojiro、Tsukamoto Satoshi
    • 雑誌名

      Development

      巻: 146 ページ: dev181925

    • DOI

      10.1242/dev.181925

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 初期発生におけるリソソーム分解の生理機能と分子メカニズム2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤 美由紀、佐藤 裕公、佐藤 健
    • 雑誌名

      生化学

      巻: 91 ページ: 643~651

    • DOI

      10.14952/SEIKAGAKU.2019.910643

    • 査読あり
  • [学会発表] 線虫遺伝学×プロテオミクスのコラボ: 父性オルガネラオートファジー制御機構の解明を目指して2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤美由紀,佐藤健,小迫英尊
    • 学会等名
      第71回日本細胞生物学会・第19回日本蛋白質科学会年会合同大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 初期発生における細胞内オルガネラリモデリング機構2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤健
    • 学会等名
      第66回日本実験動物学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] The mechanism of selective elimination of paternal mitochondria via autophagy receptor ALLO-12019

    • 著者名/発表者名
      Taeko Sasaki, Ken Sato, Miyuki Sato
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
    • 招待講演
  • [図書] ミトコンドリアと疾患・老化:受精卵における精子ミトコンドリアの排除機構2019

    • 著者名/発表者名
      柳 茂:佐藤美由紀、佐藤健
    • 総ページ数
      221(うちp52~57執筆 )
    • 出版者
      羊土社
    • ISBN
      978-4-7581-0380-0

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公開日: 2024-12-25  

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