研究領域 | マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解 |
研究課題/領域番号 |
19H05712
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
神吉 智丈 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50398088)
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研究分担者 |
松田 憲之 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, プロジェクトリーダー (10332272)
佐藤 美由紀 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (70321768)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | オートファジー / ミトコンドリア / マイトファジー |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアオートファジー(マイトファジー)は、オートファジーが選択的にミトコンドリアを分解する現象であり、ミトコンドリア機能維持に重要な役割を持つと考えられている。本研究では、生物種ごとに多様性のあるマイトファジーの分子機構を、複数の生物種をモデルとして解析し、マイトファジーの統合的理解を目指している。 出芽酵母では、マイトファジー誘導時にマイトファジーレセプターAtg32がリン酸化されることが重要であるが、昨年度は、このリン酸化は、Atg32とFar複合体の結合と解離によって制御されていることを明らかにしていた。当該年度は、Atg32とFar複合体の結合に、Far8、Far3、Far7が関与している可能性を見出した。 マウスを用いた研究では、マイトファジーを観察するための蛍光タンパク質が発現したマウスを開発することに成功した(マイトファジーモニタリングマウス)。このマウスの後肢をギプス固定し骨格筋を廃用性萎縮させ、その過程のマイトファジーを観察したところ、筋廃用性萎縮時には、マイトファジーが強く誘導されていることが明らかとなった。 ヒト培養細胞における研究では、PINK1とParkinがマイトファジーを誘導する際に下流で機能する因子の探索を行い、BCAS3とC16orf70を同定した。両者は複合体を形成した。さらにBCAS3 - C16orf70複合体が、PI3Pとの結合を介してマイトファジー誘導時に隔離膜に局在化する新規因子であることを解明した。 線虫を用いた研究では、線虫の筋組織においてマイトファジーを効率的に誘導する条件を検討し、いくつかのマイトファジー誘導条件を見出すことができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究では、酵母、哺乳類培養細胞、マウスの研究で十分な成果が出ており、研究は予想通りに進展していると考えられる。線虫を用いた研究では、マイトファジーを誘導するための条件も決定できつつあり、今後の研究推進が期待できる。こうしたことから、研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
●これまでの研究を継続し、酵母、哺乳類(培養細胞とマウス)、線虫をモデル生物種としてマイトファジーの分子機構と生理学的意義の統合的理解を目指す。 ●当該年度は、マウスの骨格筋廃用性萎縮時のマイトファジーの解析を行ったが、今後は、他の臓器、例えば心臓や神経に焦点を当てた解析を行う予定である。これらの臓器において、マイトファジー因子であるParkinの関与について、マイトファジーモニタリングマウスとParkin_KOマウスを交配して用いることで解析を進める。 ●線虫の筋組織でマイトファジーを誘導、観察する方法がほぼ確立されたため、線虫におけるマイトファジー因子を同定するために、マイトファジーに関連していると考えられている因子をsiRNAなどで発現抑制し、マイトファジーに関連する因子を同定する。そのうえで、Mitophagyにおける標的ミトコンドリアの認識機構をさらに詳細に検討する。また、Mitophagy関連因子の変異体についてストレス感受性などの表現型を探索し、生理的な意義の解明を目指す。 ●最近同定した分裂酵母マイトファジーレセプターであるAtg43について、どのようなメカニズムでAtg43が活性化されマイトファジーが誘導されるかについて解析を進めていく。出芽酵母では、Atg32とFar複合体の結合様式とその解離機構について、Far3とFar7を中心に解析を進める。
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