研究領域 | 身体-脳の機能不全を克服する潜在的適応力のシステム論的理解 |
研究課題/領域番号 |
19H05724
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
関 和彦 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 モデル動物開発研究部, 部長 (00226630)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | マカクサル / 筋シナジー / 筋再配置 / 可塑性 / 筋電図 |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度に確立したサル上肢を対象とした適応モデル動物、超適応モデル動物の作出方法を用いて、筋電図記録から適応過程における 脳神経系の変化様式を推定するための実験を行なった。第一のモデルは腕橈骨筋を深指屈筋腱切断近位部に縫合する手術であり、主として腕橈骨筋 及び周辺筋の筋活動変化を定量化した。第二のモデルにおいては、手外筋のうち、手指屈筋と手指伸筋の腱遠位部を切断し、それらを交差縫合した。このモデルにおいては、手指屈筋と手指伸筋の機能及び活動性の交代が起こるのか、起こった場合はどのような時間経過で起こるのかに ついて定量的に評価した。定量化は様々な方法を検討したが、最も精度の高いと判断された、非負値行列分解(NNMF)を用いることにした。また長期的に安定した筋電図を記録することが必要な実験であるという判断から、無線型筋電図記録を行うシステムを導入した。具体的には、米国Ripple社のLinkシステムを採用し、技術者と議論を重ねて、安定的な術式や素材を選定した。さらにNCNP脳外科医師と連関して、マカクサルの硬膜下脳波を安定的に記録する技術を確立した。術式はヒト患者とほぼ同じであったが、サルの場合はコネクタを恒久的に頭蓋に埋め込む必要があるので、その点を独自に開発した。また、電極留置位置の確認は、MRIとCTの合成画像を用い、さらに正中神経など末梢刺激に対する誘発電位を用いて同定するプロトコルも確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年1月までにデータ解析、筋電図記録を行い、3月までに脳波記録を行う予定であった。コロナウイルス蔓延で資材入手が困難になり、筋電図の記録に必要な装置の入手が困難。繰越、再繰越をして2022年7月にようやく納品された。したがって、研究は大幅に遅延したが、より多くの研究員を本プロジェクトに一時的に参加させたため、上記の研究成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
安定的な筋電図と脳波を長期的に記録することができるシステムが確立した。今後はこのシステムを用いて、筋再配置手術に対する適応のslow dynamicsとfast dynamicsを脳波、筋電図、行動解析を連関させながら定量化し、論文化を進めてゆく。
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