研究領域 | 身体-脳の機能不全を克服する潜在的適応力のシステム論的理解 |
研究課題/領域番号 |
19H05727
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
近藤 敏之 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60323820)
|
研究分担者 |
宮下 恵 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60963311)
千葉 龍介 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (80396936)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
|
キーワード | 動的グラフ構造推定 / 姿勢制御シミュレーション / 協調運動学習 |
研究実績の概要 |
研究代表者の近藤と研究分担者の宮下は,脳活動に内在する動的構造の推定ならびに構成論的モデル化手法を用いたデータ拡張に関する研究に取り組んだ[近藤2022].A05-7(松本)班から睡眠時脳波の多チャネル時系列データの提供を受け,短時間フーリエ変換(STFT)による時間周波数解析を行って得られるチャネル,周波数,時間を軸とした3次のテンソルに対しテンソル分解(非負CP分解)とTime-varying Graphical Lasso (TVGL)法により動的構造を推定した.潜在変数間の関係を睡眠ステージ固有のグラフ構造として抽出するとともに,その活動動態の特徴をチャネルと周波数帯の組み合わせ(シナジー)として可視化することができた.また,安全性を考慮した強化学習アルゴリズムを考案し,稼働範囲に制約がある条件下におけるロボットアームの到達運動学習に適用し,その有用性を示した[Miyashita2023]. また,研究分担者の千葉(旭川医科大学)は,立位姿勢維持の三次元モデルは従来研究を用い,三次元の歩行を可能とする神経系コントローラを提案した.ここで70もの筋の動作を設計し妥当な歩行を得ることはパラメータが膨大で非常に困難である.そこで我々は各関節および空間に対しての剛性を高めた歩行が容易な条件でパラメータを最適化手法によって探索し,順次剛性を縮小して探索を行う手法を提案した.その結果,股関節および腰関節に500[Nm/rad]の剛性を残すものの妥当な範囲内で歩行することを確認した[Etoh2022]. さらに近藤は,人対人の二者協調運動学習実験[Ozge2022]に加えて,ハプティックデバイスを用いた協力運動課題に取り組む二者のNIRSをコヒーレンス解析するハイパースキャニング実験を行った[Yoshida2022].
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、高齢者をリクルートする必要がある実験の実施に制限があり、遅延が生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
ネットワーク構造推定に関する研究項目では、データの統計的性質からの構造推定手法について見通しが立ったことから、逆に構成論的な手法によるモデル化手法を検討する。具体的には、動的ニューロンモデルで表現される力学系の弱疎結合系が、Collective Almost Synchronization (CAS)と呼ばれるカオス力学系になることを用いて、CASモデルの出力波形を基底関数として脳波データを線形近似するモデル化手法を提案する。認知課題下の姿勢制御に関する神経・筋骨格シミュレーションに関する研究項目では、「歩き出し」に着目した神経ネットワークモデルの精緻化と、高齢者を用いた被験者実験を行う。適応性を高める運動学習課題に関する研究項目では、人間ー人間の協調運動学習系を構築し、前年度までに明らかにした人間ーロボット系の特性との類似性・相違性を調査することにより運動学習支援アルゴリズムのさらなる改良を試みる。
|