研究領域 | 身体-脳の機能不全を克服する潜在的適応力のシステム論的理解 |
研究課題/領域番号 |
19H05729
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
淺間 一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50184156)
|
研究分担者 |
井澤 淳 筑波大学, システム情報系, 准教授 (20582349)
温 文 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (50646601)
安 ち 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (70747873)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
|
キーワード | 超適応 / 運動適応 / 身体認知 / 情動 / 数理モデル / 計算論 / 筋シナジー / リハビリ |
研究実績の概要 |
本研究項目では身体認知・情動が超適応の獲得の過程に与える影響を解明し,身体制御の変化を定量的予測可能な数理モデルを構築し,検証することを目的とする.さらに,数理モデルを基づいて,身体認知・情動を介して,超適応機能を促すモデルベースの介入手法の提案と検証を行う. 研究分担者の井澤らのグループ(筑波大学)は,新奇身体構造に対する学習の計算論的モデルを開発した.この結果を検証するために,(1)到達運動課題,(2)データグローブを用いたde novo 運動学習課題,(3)仮想手術課題の3つの実験結果対して,ニューラルネットワークを用いた計算論的モデルを構築し,その学習スピードが運動指令の探索ノイズによって説明できること示した. 研究分担者の安(東京大学)のグループはヒトの起立動作において4つの筋シナジーが存在し,それぞれ上体の前屈,離臀,全身の伸展,姿勢の安定化を担っていることを示してきた.これに対して,視覚や前庭感覚などの感覚情報に加えて,身体認知がヒトの起立動作,特に筋シナジーに与える影響を新たに調査した. 研究代表者淺間,研究分担者温,研究協力者濵田らのグループ(東京大学)では,運動学習中の脳波パワースペクトルの特徴に基づき[5],ニューロモジュレーション介入の検証を試みた.さらに,淺間らのグループは,脊髄小脳変性症患者に認められる運動制御システムの障害を大脳でどのように代償されているのかを明らかにするために,脳構造画像解析により大脳容積を算出し,可塑的な変化が生じている領域の同定を試みた.最後に,淺間らのグループでは,慶應義塾大学病院の前田貴記講師のグループと共同に,統合失調症患者の運動主体感の失調に焦点を当て,自他判断,制御の検出,運動制御といった3つの下位プロセスを,それぞれ認知課題を用いて解析した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
B03項目では本年度において,運動適応における身体構造認識の役割と探索の計算論的役割を解明し,身体認知が筋シナジーに与える影響を調査した.また,運動学習の過程において,脳刺激を与えることによる加入の可能性を実証的に検討した.さらに,脊髄小脳変性患者と統合失調症患者の神経基盤と行動メカニズムを調査し,臨床の分野から身体意識のモデル化に重要な知見を提供した.国際学術誌,国内外の学会で積極的に成果を公表した.以上のことかrあ、研究はおおむね順調に進展していると言えるでしょう。
|
今後の研究の推進方策 |
B03項目は身体認知・情動といった認知的な側面に注目し,新たな介入手法が身体認知・情動を介して,超適応機能を動員する過程をシステム論的に理解し,超適応を実現するための介入手法を提案することを目指す.超適応過程を定量的に測定し,数理モデルを構築するため,意味推定可能な脳情報デコーディング技術を開発し,身体認知・情動を定量的測定する手法を確立する.さらに,モデルベースの介入手法を検証するために,ロボティック介入脳神経科学プラットフォームの開発を行う.具体的に,脳損傷後の片麻痺の患者において,超適応過程の定量化測定とモデル化を行う.超適応の数理モデルに基づき,モデルベースの介入手法を提案し,検証する. 今後の研究の推進方策として,これまでの行動実験,臨床研究から得られた成果に基づいて,モデル化研究に注力していく予定.特にモデルベースの予測,測定,および介入手法の設計に取り組む予定である.
|