研究領域 | 出ユーラシアの統合的人類史学:文明創出メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
19H05733
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
松本 直子 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (30314660)
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研究分担者 |
桑原 牧子 金城学院大学, 文学部, 教授 (20454332)
工藤 雄一郎 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 准教授 (30456636)
佐藤 悦夫 富山国際大学, 現代社会学部, 教授 (40235320)
石村 智 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 無形文化遺産部, 室長 (60435906)
中園 聡 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 教授 (90243865)
上野 祥史 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (90332121)
松本 雄一 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (90644550)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 認知考古学 / 物質文化 / 土器 / 土偶 / 製作技術 / 三次元モデル / 比較考古学 / 身体技法 |
研究実績の概要 |
本計画研究では、これまで概念的に切り分けられてきた「心」と「物質」がどのような相互作用によって文化を生み出すのかを追求するため、身体的機能を拡張する技術的側面と、感性に訴えて心を操作する芸術的側面とを、「アート」として統合的に分析し、物質文化が人間にどのような力を及ぼすかを検討している。今年度は以下を実施した。 (1)連携研究の推進。今年度は班会議を3回実施し、意思の密な疎通を図った。研究打ち合わせとともに、他班のメンバーを交えた議論や、アイトラッカーの操作テスト等も行った。第3回は、2020年2月に岡山大学で開催し、進捗状況の確認や研究打合せ等を行った。班を超えた共同研究として、B02班メンバーや海外研究協力者とヒト形人工物研究ユニットを立ち上げ、心理・行動・脳活動調査実験の検討を開始した。視線計測を用いた土器や土偶の顔の印象評価についての実験計画を進め,基礎的な実験を行った。また、素地土の科学的検討等のために、ハンドヘルド蛍光X線分析装置の調整と計測試験を行った。 (2)研究方法の開発と実践。身体感覚や知覚という視点から、三次元計測データを中心に造形的特徴の定量的把握及び比較分析を行う必要があり、他班とも連携しつつ3Dデータの獲得・分析方法の検討を行った。C01班を主体として実施されたハンズオン・セミナーへの参加・協力等も通して本研究の基礎となる3D計測・解析のための環境を整え、12月にはA01班、C01班のメンバーと合同でBIZEN中南米美術館の資料調査・3Dデータ化を実施した。特任助教を雇用し、SfMによる三次元モデルの技術的検討を行い、データを蓄積していく体制を整えた。 (3)出ユーラシア比較研究。各メンバーが日本列島、中南米、オセアニアの土器、土偶、漆、イレズミ等について海外調査を含む研究を進め、第2回全体会議で成果を発表し、共通する要素について考察を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の短い期間ではあったが,各研究者は、それぞれの分担項目や領域内の他班と連携した共同研究を実施し、成果を上げつつある。機材を含む研究環境を整え、次年度に備える準備を整えることができた。縄文土器や中南米の土製品を中心とするヒト形人工物等について多角的に研究を進めたが、それらについて、班内外や諸機関の協力を得て三次元記録等のデジタル記録を開始し、デジタルデータの蓄積を開始することができた。それらのデータの読み取りも開始しており、今後の充実への大きな足掛かりを得ることができた。技術的側面と芸術的側面を統合的に見ようとする研究視点に基づくフィールド調査も実施され、ドローンを用いた遺跡の三次元実測にも着手した。B02班メンバーとの共同研究で心理・行動・脳活動調査実験の検討を開始し、視線計測等を用いた実験計画と基礎的な実験を行ったことも、今後へ向けての成果である。なお、作品製作時の視線計測実験に協力していただく予定であった縄文造形家の急逝により、土器製作者の認知に関する実験計画は再考せざるを得なくなったが、適切な協力者を探すことができ実験の見通しがついた。中国およびメキシコの国際会議で本計画研究を紹介したが、良い反応があり、国際的に関心が持たれることが実感できたことを付言したい。今後の成果が十分に期待できよう。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度末以降の世界的な新型コロナウイルス感染状況のため、海外のフィールド調査ができない状況となっており、実験的研究、資料調査についても感染予防に留意して実施する必要がある。実験的研究については、オンラインによる実験も含めて感染防止に留意した方策を工夫する。資料の三次元モデルについては、SfMを中心に作成する予定であったが、調査にかかる時間や感染リスクを軽減するため、三次元レーザースキャナによる計測を併用するなどし、効率的に資料のデータ化・分析を実施する。フィールド調査が実施できない場合は、既存の資料を用いた分析、文献調査により、研究を進める予定である。また、オンラインを活用した活発なディスカッションにより統合的研究を進め、その成果を出版し、成果を公開していく予定である。
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備考 |
アウトリーチとして、『ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~ KAKENHI』のプログラム「土器を調べて 2000 年前の「個人」に迫る!Ⅷ-考古学 + 歴史学 + 心理学 + サイエンス-」において,中学・高校生に本研究を紹介した。また、メキシコのテンプロマヨール博物館で公開フォーラムを開催し、研究者・一般市民対象にプロジェクトの視点や成果について発表した。
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