研究領域 | 出ユーラシアの統合的人類史学:文明創出メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
19H05734
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
松木 武彦 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (50238995)
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研究分担者 |
藤澤 敦 東北大学, 学術資源研究公開センター, 教授 (00238560)
渡部 森哉 南山大学, 人文学部, 教授 (00434605)
比嘉 夏子 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (00721565)
寺前 直人 駒澤大学, 文学部, 教授 (50372602)
市川 彰 名古屋大学, 高等研究院(文), 特任助教 (90721564)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 文明 / 戦争 / 社会複合化 / 古代国家 / 武器 / 認知考古学 / 比較考古学 / 文化進化 |
研究実績の概要 |
戦争に関わる人工物(考古資料)を中心とした考古学的データを体系化し、日本列島・アメリカ大陸・オセアニアの各地・各文明において、社会複合化(都市・国家形成)と戦争にかかわる各種の考古学的データ群(項目)を配列したリストを作り、事象の出現の順番と因果関係を見据えつつ戦争の出現・発展・低減・消滅のプロセスを地域ごとに比較するためのフォーマットの根幹部分を作成した。さらに、このフォーマットにモニュメント築造や技術革新・芸術表現などに関する考古学的事象についてのデータ群を加え、領域全体で取得したデータを比較検討するための大型データ群を作成するための準備作業を行った。とくに戦争に関わる事象を考察の中心対象とする本計画研究では、アンデスやマヤの遺跡の現地調査成果なども踏まえつつ、戦争に関わる人工物(考古資料)を中心とした考古学的データを体系化し、データ群を配列したリストを作り、事象の出現の順番と因果関係を見据えつつ戦争の出現・発展・低減・消滅のプロセスを地域ごとに比較するための基盤を2019年12月までに作成した。このような基盤を参照しながら、2020年2月にはメキシコ・テオティワカンで開催された領域の全体会議に赴き、代表者の松木が、日本列島先史時代における戦争・モニュメント・アートの時系列変化のパターンを示し、アメリカ大陸やオセアニアの諸地域・諸文明のパターンと比較するための要素・項目・問題点および理論的姿勢などを提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データの取得および比較検討の基盤となる、戦争と社会複合化を軸とした考古学的データを体系化した表が完成した。したがって、各地域・各文明において遺跡調査や既刊の報告書から得られた情報をもとに表の項目を埋めていく作業をこれから行うことによって、戦争と社会複合化およびアートやモニュメントのパターンが、各地域・各文明においてどのように展開したのかを把握し、相互に比較することによってその普遍性と多様性とを弁別し、文明形成という現象のメカニズムを解き明かすための基礎的認識を共有できる基盤を形成できた。この基礎的な作業が行えたことにより、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の本研究の目的は、入れ子状に複合化した巨大な社会(国家など)をヒトが生み出したメカニズムとプロセスを、戦争という事象を通じて解明することである。このような社会の複合化過程は、文明化という現象と軌を一にしているので、本領域研究が解明を目ざす文明創出のメカニズムの根本をなすものとして重要である。このメカニズムに必ず伴う戦争という事象が社会を複合化させるプロセスには、武力による征服活動を通じて社会が統合される外向的・物理的側面と、戦争にまつわる表象や意識がメンバーの感情を喚起して社会を自己組織化させる内向的・認知的側面とがある。したがって、戦争と社会複合化を分析の軸とする本計画研究では、今年度にほぼ概要ができた考古学データの体系表(上記)のうち、戦争に関わる人工物(考古資料)の時系列パターンの抽出とその地域比較によって、ヒト社会における戦争と社会複合化の相補的プロセスを復元する。具体的には、第1に「戦争に関わる人工物(考古資料)の時系列化」を完成させ、地域比較の基盤を得ることである。その後、「戦争に関わる人工物(考古資料)」の体系化(エヴィデンス表の作成)を最終的に完了し、それに基づいて、班員がそれぞれ分担する地域を対象に「戦争に関わる人工物(考古資料)の時系列化」を提示する。第2に、それらを地域間で相互比較しつつ、「社会の複合化と戦争」のプロセスとメカニズムを普遍的に解明することにつながる視座や論点を明確化していく。
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