研究領域 | 出ユーラシアの統合的人類史学:文明創出メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
19H05735
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
大西 秀之 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (60414033)
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研究分担者 |
稲村 哲也 放送大学, 教養学部, 特任教授 (00203208)
須田 一弘 北海学園大学, 人文学部, 教授 (00222068)
木村 友美 大阪大学, 人間科学研究科, 講師 (00637077)
河合 洋尚 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 准教授 (30626312)
清水 展 関西大学, 政策創造学部, 特別任用教授 (70126085)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 認知・行動様式 / 身体 / 生存戦略 / 景観 / 環世界 |
研究実績の概要 |
本年度は、まず個人の研究活動から領域全体に対する貢献までを議論し共有する機会として、本研究計画班の代表者・分担者・協力者が参加する班会議を二回開催した。第1回会合では、初年度の確認事項として、申請時点での領域全体とB01班の研究計画を把握した上で、各メンバーが調査研究の計画を報告するとともに、どのような貢献を領域全体とB01班に対して果たしうるか検討を行い今後の方針を議論した。第2回会合では、本年度の各メンバーの活動と今後の計画を報告するとともに、次年度(2020年度)に本計画班がホストとなる第3回全体会議のテーマ選定に加え、ベーリンジアにおける人類集団の進出をテーマとする国際シンポジウムの開催計画などを議論した。 次に具体的な活動として、まず代表者1名・分担者5名・協力者4名それぞれが、本学術領域の対象地域である中南米・東南アジア・オセアニアで民族誌調査を実施した。また第1回・第2回の全体会議では、代表者1名・分担者5名・協力者5名が口頭発表・コメント・ポスター報告を行い、各自の調査研究計画と領域全体に対する貢献を提示した。なお詳細に関しては、本領域の『2019年度報告』(http://out-of-eurasia.jp/images/report2019.pdf)「B01班活動報告」(44-84頁)を参照願いたい。 以上のような活動を基に、本年度は、学術雑誌論文11本(和文7本・英文4本)、書籍掲載論文7本(和文6本・英文1本)、単著・編著3編(和文2編・英文1編)、発表講演(日本語26・英語12)を刊行・報告することができた。各詳細に関しては、本報告と前掲書『2019年度報告』「業績」(123-126頁)を参照願いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、調査対象地の治安状況の悪化やコロナ問題などで、一部に計画の変更・中止があったものの、全体として概ね当初の計画は達成できたと評価できる。具体的には、①中南米とオセアニアにおいて生業活動や儀礼実践の参与観察、②景観や建築をテーマとした民族誌調査、③生物学的身体を対象とした栄養や健康などの現地調査、④出ユーラシア地域への人類の移動・拡散、という計画当初から目的としていた調査研究が、それぞれ実現できた。これらの調査研究は、A01~C01班までの6グループとの連携が可能であり、ひいては領域全体に貢献しうるものでもある。 ただし、本年度は、必ずしも十分には実施できなかった調査研究もある。その一つが、他グループが取り組んでいる「近代科学」の調査研究の実践の場に参与し、その分析・検討のプロセスに関与することである。このアプローチは、「解釈」ではなく「分析」に民族誌調査研究の成果を応用することを目的にするものであり、B01班にとって領域全体に貢献するためには不可欠な試みと位置づけている。これに加え、現時点での調査研究は、対象とした社会文化の人々の認知・行動パターンにまで踏み込んだ十分な成果をだすには至らなかった。認知・行動パターンは、当該集団のニッチ構築を解明する上で必須となるため、次年度以降は、最重要課題として取り組むことを計画している。 もっとも、これら一部課題があるものの、本年度は、5年間の初年度としてB01班が設定した研究計画は概ね実施でき、また中長期的な射程を見据えた調査研究を推進し領域全体に貢献を果たしうる成果を得るための、一定の基礎的な成果を得ることができたと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画としては、まず基本的に各メンバーがそれぞれのテーマ、方法、ディシプリンに基づき、当該地域社会に暮らす人々の文化的実践に伴う認知と行動に関する基礎データを収集する。具体的には、地域間の比較に加え、①生業・生産活動、②儀礼・宗教実践、③生理的身体活動、といったテーマや対象を共同調査・研究により最大限関連づけ、当該社会の人々の認知や行動が形成されている要因や背景に多角的・包括的なアプローチを試み、出ユーラシアにより多様な自然環境に進出・適応を果たすとともに文明形成の基盤となった現生人類のニッチ構築の能力を検討する。 以上のような計画の下、次年度(2020年度)以降は、新型コロナ感染症問題に最大限配慮し国内外の社会情勢を見極めつつ、次のような活動を適時推進する。まずなるべく早期にメンバー全員が参加する会合の機会を設け、2019年度の活動結果を踏まえた上で、該当年度における個々のメンバーと班全体の調査研究計画を決定する。またその計画に従い、現地調査を実施し目的とするデータ収集など成果の蓄積を進める。そして年度末には、調査データ・成果の比較検討を目的とした研究会合を設け、メンバー全員で情報共有に努めるとともに次年度の計画を策定する。なお本年度より、その時々の目的や関心に応じて総括班をはじめA01~C01までの他班から選定したメンバーを本研究班の会合に招待し、発表やディスカッションなどを通して意見交換を行い、各グループとの共同・連携を深めるとともに、データ・成果の共有とその利用方法、領域全体に資する調査研究の方向性、問題解決のための共同研究の可能性などを議論する。これに加え、民族誌調査を実施する公募研究の代表者と会合の機会を設け、本研究グループと共同・連携を行うための具体的な調査・研究計画を立案する。
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