研究領域 | 出ユーラシアの統合的人類史学:文明創出メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
19H05736
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
入來 篤史 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (70184843)
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研究分担者 |
齋木 潤 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (60283470)
川畑 秀明 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (70347079)
齋藤 亜矢 京都芸術大学, 文明哲学研究所, 准教授 (10571432)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 霊長類 / 脳神経科学 / 進化 / 認知構造 / 感覚行動連関 |
研究実績の概要 |
計画2年目に入った本年度は、初年度に開始した全体計画の下記の第一段階をさらに推進して、第二段階の構築と運用を開始した。すなわち、まず第一段階として班内の各サブ・グループが行う認知神経行動データの取得法を開発準備するとともに、領域内他班との連携体制を道具に関わる現象を介して有機的に構造化することができた。第2段階としては、各グループ共通の分野横断的認知医科学・生物学的裏付けによって蓄積されるデータの有機的な構造化を図り、最終的に『三元ニッチ構築』仮説の理論的/実験的な検証に向けた筋道をつけることができた。具体的には: 第一段階: 班内の各サブ・グループの研究対象は、【(環境―物)=(心)=(脳―身体―脳)=(物―環境)】と互いに重複しながら連鎖的に繋がる関係にあり、その連鎖の両端が外部の自然/人工環境世界(領域内他班が担当)に繋がる大ループを形成して構造化されることとなった。これら各要素は何らかの形で道具を介して連結されるので、この研究体制自体が、本領域で検証すべき『三元ニッチ構築』構造を形成することになる。また、この大規模構造の中で、各サブ・テーマは領域内の他班とそれぞれ相補的な関係にあるので、各班で蓄積されるデータを参照しながらの活用を開始した。 第二段階: 上記で開発・構築した技術と体制にしたがって、領域内他班が蓄積するデータを参照活用しつつ認知行動データの収集と解析に着手した。これに加えて、各分担者間で共通して行える種々の横断的脳神経生物科学的解析を遂行することによって、取得認知データの脳神経生物科学的裏付けを進めて、これらをハブとしてモデル班と協働しつつ、各分担者データの有機的な構造化を遂行している。この様な活動の一環として、班横断的な「ドメスティケーション・ユニット」を組織して本班が主体となって活動することに着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した実験計画を、繰り越しの後におおよそ遂行することが出来た。各グループともに、初年度からの各自の実験系の確立への注力に加えて、他班との共同研究も構築して有効な連携成果を挙げ始めた。 (入來グループ): 『三元ニッチ構築仮説』 を実証する具体的メカニズムとしての脳―腸相関に関して、食環境条件などの介入操作による効果を明らかにするとともに、コロナ禍で遅れていたタイ島嶼の道具使用サル研究の次善策としての国内施設での摸擬環境を用いたシステム開発準備体制が整って、データ取得を開始した。(川畑グループ): 昨年度に引き続くfMRI研究に加えて、今年度から新たに土偶顔印象の認知神経科学研究(A02班、A03班との共同)や、銅鐸音響に関する研究(A03班との共同)などの、班横断的研究を開始した。(齋藤グループ): コロナ禍で滞っていた被験者を募っての認知行動実験の次善策として、オンライン描画実験による考古遺物表現の解析に着手するとともに、アートの進化的起源や遊び要素の関与などについての進化認知学的研究に関する予備的知見が得られ始めた。(齋木グループ): 世界認知マップの構築に関し、コロナ禍で遅れ気味だった国際的ウェブ実験・調査プラットフォームの調整が進捗し、それらによるデータに基づく機械学習解析によって数種の認知成分に関する分布傾向が明らかになった。これらの班員による当初計画研究に加えて、研究協力者の山本との協働により、「できる」のに「しない」認知行動特性などの進化過程における各種制約の重層構造の存在など、新たな領域全体に寄与すべき新たな実証的理論を提案することが出来た。 以上のように本年度として予定の実験計画は、コロナ禍による遅滞を挽回するための次善策が奏功しはじめ、領域内各班との連携を含めて全体としてはほぼ計画に沿って進行することができたので、「順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
計画3年目に入る来年度は、今年度までに進めた第一・二段階をもとに、構築した連携体制を有効に活用して有機的な共同研究を展開する。具体的には: 第一段階:班内の研究対象の構造である(環境―物)=(心)=(脳―身体―脳)=(物―環境)と互いに重複しながら繋がって、その連鎖の両端が外部の自然/人工環境世界(領域内他班が担当)に繋がる大ループを形成して構造化される特徴を活かして、得られた実証データに基づいて本領域で検証すべき『三元ニッチ構築』の具体的メカニズムを提案するための論理的基盤を確立する。 第二段階:上記で開発・構築した技術と体制にしたがって、領域内他班が蓄積するデータを参照活用しつつ認知行動データの収集と解析を進める。これに加えて、各分担者間で共通して行える種々の横断的脳神経生物科学的解析(無侵襲脳機能画像、分子遺伝型解析、行動AI定量解析、社会性脳機能分析、介入操作解析、心-脳-身相関分析、など)を遂行することによって、取得認知データの脳神経生物科学的裏付けを進めて、これらをハブとしてモデル班と協働しつつ、各分担者データの有機的な構造化を行う。すなわち、それらの相互関係を実証的に捉えるための調査・実験を、A01~A03班およびB01・03班と協働しつつ計画実施し、身体を介した物質環境と心・精神との相互浸潤ダイナミクスの駆動力を担う、人間メカニズムの駆動原理の探究を目指す。
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