計画研究
2020年度は、コロナ禍のため当初予定していたアメリカ大陸での古人骨データ収集が不可能となったため、文化的適応と身体変化の代価案として、瀬口と研究協力者の米元は、九州大学博物館所蔵の鹿児島種子島広田遺跡の頭蓋骨3次元データを収集し、必要なデータ処理を行い、人為的な頭蓋骨変形の可能性のある頭蓋骨後頭部3次元形態の定量化を試みた。五十嵐は人口構造・人口動態を解明するため、人骨から妊娠出産の回数(多寡)を推定する方法を確立し、先史時代の人口構造の復元を試みた。AIによる年齢推定方法も開発中である。山本はCOVID-19感染拡大で、計画していたアンデス高地での疫学調査が実施できなかったため、チベット高地の人々のEPAS1遺伝子とEGLN1遺伝子の遺伝的多型、ヘモグロビン動態にみられた性差、自己免疫疾患発症促進の可能性について、身体の環境適応の状態とその破綻が及ぼす影響を明らかにするための研究を進めた。水野はメキシコ・テオティワカン遺跡ならびにペルー・タンタリカ遺跡から出土した古人骨のDNA分析を進め、これまでに構築してきた手法をよりブラッシュアップし、これらのミトコンドリアゲノムのほぼ全塩基配列を決定することに成功した。さらに核ゲノム分析も実施した。石井と松永は、日本人大学生のDNAを採取し、男性においてハプログループD-M55系統を調べ、体格、親しい友人の数、孤独感、主観的幸福感などの心理・生理学的指標を得点化し、ハプログループD-M55遺伝子多型を持っている男性が、出ユーラシアに関連する新奇性追求特性といった心理・生理学的特性を持っているかを検討した。勝村はモデル動物メダカとヒトでの新奇性追求行動に関わる遺伝子進化に共通性を期待し,新奇性追求行動に関わる遺伝子の探索とその進化パターンの推定のためゲノム編集による新奇性追求行動関連遺伝子の機能解析に取り組んだ。
2: おおむね順調に進展している
2020年度はCOVID-19感染拡大のため、当初予定していた国内、海外調査が不可能な状況となった。そのため、新しいデータを収集できたメンバーもいるが、各メンバーはこれまでに取得したデータの解析を行った。B03班のメンバーは、人為的頭蓋骨変形の3次元形態解析と健康指標データの生物考古学的分析; 骨学的方法を用いた人口構造分析およびAI を用いた古人骨の年齢推定方法の開発; 感染症の実相、環境適応の人類学的解析; 新大陸ならびに日本列島から出土した古人骨を用い、母系のミトコンドリアゲノム情報ならびに、父系・母系の核ゲノム情報を用いた解析; 身体の状態を実験的に変化させることができる駆血用自動調圧装置を導入し、身体の状態が認知機能に与える影響についての実験を実施; 出ユーラシア関連の心理・行動に関する適応候補遺伝子の推定および解析を実施; 最後に、15個の新奇性追求行動関連遺伝子についてゲノム編集メダカを作成し,その機能解析を行うとともに,原因変異を見つけるためのQTL解析を南日本メダカを用いて再実施した。コロナ禍で計画変更する必要があったが、全体として進捗状況はおおむね達成できている。全メンバーは、新学術領域・出ユーラシア主催のオンライン国内全体会議での発表、オンライン学会発表、原著論文の出版、アウトリーチ活動を活発に行った。班研究会をオンラインで主催し、研究結果を定期的に発表しあった。また、他班のメンバーとユニット活動「ドメスティケーション」、「人間生物学」も始め、岩波「科学」で「ドメスティケーション」の特集を出版した。
COVID-19感染拡大のため、当初予定していた一連の国内、海外調査が可能になるかどうか、はなはだ不透明な状況にあるが、海外調査ができない場合も、現在取得しているデータ、および海外の共同研究者から共有されたデータを用いて分析を進める。瀬口は人為的な頭蓋骨変形の3次元データの収集と分析を続け、変形させた頭蓋形態のパターン等を分析、身体を人工的に変形させた目的・意義と文化・社会との関連を検討する。五十嵐は骨学的方法を用いた人口構造分析およびAIを用いた古人骨の年齢推定方法の開発を行う。山本は感染症の実相、環境適応の人類学的解析を続ける。高地適応した人々のヘモグロビン動態にみられた性差を検証し、女性に何が起きているのかを明らかにしていく。また、低酸素環境での適応と自己免疫疾患等の発症の可能性について解析を続けていく。水野は昨年度から引き続き本年度も、新大陸ならびに日本列島から出土した古人骨を用い、母系のミトコンドリアゲノム情報ならびに、父系・母系の核ゲノム情報を用いた解析を、研究協力者・植田と共に実施する。なお、ゲノム分析に関する研究倫理ならびに遺伝子解析とも審査済である。松永は身体の状態を実験的に変化させることができる駆血用自動調圧装置を導入し、身体の状態が認知機能に与える影響についての実験を行う。石井は出ユーラシア関連の心理・行動に関する適応候補遺伝子の推定および解析を実施する。勝村は15個の新奇性追求行動関連遺伝子についてゲノム編集メダカを作成し,その機能解析を行うとともに,原因変異を見つけるためのQTL解析を南日本メダカを用いて再実施する。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (21件) (うち国際共著 17件、 査読あり 19件、 オープンアクセス 15件) 学会発表 (27件) (うち国際学会 4件、 招待講演 12件) 図書 (2件)
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