研究領域 | 出ユーラシアの統合的人類史学:文明創出メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
19H05738
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
中尾 央 南山大学, 人文学部, 准教授 (20720824)
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研究分担者 |
野下 浩司 九州大学, 理学研究院, 助教 (10758494)
金田 明大 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, センター長 (20290934)
田村 光平 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 准教授 (60725274)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 三次元データ / 幾何学的形態測定 / SfM/MVS |
研究実績の概要 |
本年度は昨年度に引き続き,遠賀川式土器および縄文,弥生,古墳時代の古人骨頭蓋について三次元計測を進めた.特に後者について,主な場所は五松山洞窟遺跡,梨木畑遺跡,熊野堂遺跡,矢本横穴墓,山畑横穴墓,山王遺跡,二木横穴墓,駒坂新田横穴墓,戸塚山古墳,江道横穴墓,羽沢台横穴墓,亀山古墳,御立山古墳,山ノ神古墳,仁万坂灘遺跡,吉藤古墳,高坪古墳,里浜遺跡,などである.主にレーザースキャナーを用いた計測を行い,三次元データを取得していった.取得したデータについては,31個のランドマークを配置し,幾何学的形態測定(geometric morphometrics)によって解析を進めた.古墳時代の古人骨については,特に中国地方のものについて予備的な解析結果を発表することができた(中川・吉田・中尾2022『古代吉備』33: 43-60). また遠賀川式土器についても同様に,データの取得および解析を進めた.本年は特に三次元計測手法の確立と普及を主な目的とし,各地でこの目的を進めた.成果の一つとしてKaneda et al.(PLOS ONE, 17(7): e0270660)を発表することができた.これはSfM/MVSによる自動化された計測手法を発表した論文であるが,この手法をさまざまな埋蔵文化財センターで実践することにより,本班がデータを取得できただけでなく,各行政機関での三次元計測手法の普及にもつながったと考えている. また,A03班のテーマの一つである戦争について,偏狭な利他性という観点から関連研究についてレビュー論文を執筆することができた.これは他班と連携して編集された『心理学評論』の特集号の一環になっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた通りに三次元データが収集でき,解析が進められたため.
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今後の研究の推進方策 |
次年度が最終年度であるため,解析結果の論文化に注力したい.遠賀川式土器については,2次元実測図の楕円フーリエ解析結果および3次元データの球面調和関数による解析結果を比較考察した論文を準備中であるが,こちらを次年度での投稿を目指したい.古人骨については,縄文,弥生,古墳の各時代について,幾何学的形態測定による解析結果を論文化していく.これによって日本列島内の各先史時代における人間集団の大まかな集団移動のパターンを推測することができると考えている.その上で,この人類集団移動パターンと他の考古遺物の文化伝播パターンを比較することにより,考古遺物の拡散パターンが集団移動によって説明できるのか,それとも文化伝播によって説明できるのか,といった文化進化的考察を進める.この考察により,日本列島内での文化進化モデルを構築し,そのモデルを出ユーラシア全体へと拡張することを最終的な目標としたい.
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