卵子や初期胚において、ヒトDPPA3がDNA維持メチル化因子UHRF1のクロマチン結合を阻害する分子機構を解明した。ヒトDPPA3とUHRF1 PHD fingerの複合体構造をX線結晶構造解析で決定した。その結果、すでに報告したマウスDPPA3と異なる様式でヒトDPPA3はUHRF1 PHD fingerに結合することが分かった。さらに、この結合様式の違いはヒトDPPA3がマウスと異なりUHRF1のクロマチン結合に強い阻害効果をもたらさず、DNA脱メチル化を促さないことが分かった。これらの結果から、ヒトの卵子形成や初期胚におけるDPPA3の役割はマウス全く異なるこが明らかになった。 ヘテロクロマチン領域のDNA維持メチル化を制御する因子としてクロマチンリモデラーHELLSとその活性化因子CDCA7の役割を構造生物学的に明らかにした。CDCA7が片鎖メチル化DNA結合能を有することを明らかにして、片鎖メチル化サイトを含むヌクレオソームとCDCA7の複合体構造をクライオ電子顕微鏡単粒子解析で決定した。その結果、CDCA7が片鎖メチル化サイトにDNAのmajor groove側からアクセスすること、ICF症候群の患者で見られるCDCD7のアミノ酸置換が、ヘミメチル化サイトやDNAのリン酸骨格の認識に関与することがわかった。ICF症候群ではセントロメア領域の低メチル化をもたらすが、疾患をもたらす変異のDNAメチル化における影響の構造基盤を解明できた。
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