計画研究
最近我々は、体細胞分裂から減数分裂の切替えに決定的な役割を担う新規のマスター転写因子MEIOSINを同定した。MEIOSINの制御下に置かれている遺伝子群の中には、減数分裂を特徴付ける遺伝子が含まれることが、直接制御される標的遺伝子には多くの未解析のhypothetical geneが含まれることが判明している。これらの未解析の遺伝子には、減数第一分裂に必要とされる未開拓の因子や体細胞型の細胞周期を積極的に抑制するものが含まれる可能性がある。まず、これらhypothetical geneについて、発現パターンの組織特異性を検討して精巣と卵巣に発現が限定される遺伝子を絞り込み、それらについて受精卵へのCRISPR-Cas9導入による遺伝子破壊を行い、8週齢F0個体の精巣が委縮を示すか否かを指標に表現型を解析した。なお効率良くスクリーニングを進める必要があるため、alleleの塩基配列の確認の手間を省くことができるように標的遺伝子座を大きく欠失させるssODN法を用いた。このスクリーニングにより選抜された複数の遺伝子についてさらに機能解析を進めた。MEIOSIN標的遺伝子の一つであるZFP541は減数分裂の際に転写抑制複合体を形成してクロマチン・エピジェネティクスの制御に関連する遺伝子群の発現を抑制することを明らかにした。この研究はこれまでに先行研究が少ない減数分裂の遺伝子発現プログラムの終結について一石を投じる可能性が期待される。またMEIOSIN標的遺伝子の一つであるFbxo47は減数分裂時の相同染色体の対合を安定に維持する役割があることが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
MEIOSINの制御下に置かれている未解析の遺伝子について、発現パターンの組織特異性を検討して精巣と卵巣に発現が限定される遺伝子を絞り込み、それらについてノックアウトマウスの作製を行い8週齢F0個体の精巣が委縮を示すか否かを指標に表現型を解析した。MEIOSIN標的遺伝子の一つであるZFP541 について解析を行ったところ、ZFP541はmeiotic prophaseの後半から半数体のround spermatidで発現するZinc fingerドメインを持つタンパク質であることが判明した。Zfp541を欠損させると減数第一分裂以降のステージへの進行が見られず不妊を示すことが明らかになり、減数第一分裂をexitする過程で何らかの役割を担っていることが推定された。またIPと質量分析を駆使した解析から、ZFP541がKctd19やHDAC1と相互作用することを見いだした。Kctd19も同様にmeiotic prophaseの後半から半数体のround spermatidで発現することが明らかとなり、その遺伝子を欠損させると減数第一分裂以降のステージへの進行が見られず不妊を示すことが判明した。ノックアウトマウスの表現型解析とタンパク精製-質量分析法を駆使した解析の結果、精母細胞の減数第一分裂時にZFP541が Kctd19やHDAC1とともに転写抑制複合体を形成してクロマチン・エピジェネティクスの制御に関連する遺伝子群の発現を抑制することを明らかにした。またFbxo47もMEIOSIN標的遺伝子の一つして同定された。Fbxo47を欠損させると減数第一分裂以降のステージへの進行が見られず不妊を示すことが明らかになった。Fbxo47は相同染色体の対合を安定に維持する役割があることが明らかとなった。
MEIOSINに直接制御される未解析の標的遺伝子には、減数第一分裂のクロマチン構造の形成に必要とされる未開拓の因子が含まれる可能性がある。引き続き、これらMEIOSINに直接制御される標的遺伝子について、発現パターンの組織特異性を検討して精巣と卵巣に発現が限定される遺伝子を絞り込み、それらについて受精卵へのCRISPR-Cas9導入による遺伝子破壊を行い、8週齢F0個体の精巣が委縮を示すか否かを指標に表現型を解析する。またコヒーシンの減数第一分裂前期におけるTAD形成への寄与についてHi-C解析を行って、体細胞型から減数分裂型への染色体高次構造の形成過程について検討を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 図書 (7件) 備考 (2件)
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https://researchmap.jp/read0123107/
http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/bunya_top/chromosome-biology/