計画研究
岩間は永野との共同研究で、造血幹細胞の細胞分裂により生み出される2つの娘細胞の細胞形質と高次クロマチン構造をペアとして1細胞解析することで、造血幹細胞の対称分裂と非対称分裂におけるクロマチン高次構造の継承の実態とその細胞形質変化への関わりを解明する。これを実現するため、永野はHi-CデータとRNA-seqデータを同じ1細胞から同時取得するための新技術を開発し、HCT116細胞株の細胞周期変化を利用して、同一細胞から得た Hi-CデータとRNA-seqデータの整合性を確認した。この新技術を用い、岩間・永野の共同研究により造血幹細胞の娘細胞ペアのHi-Cデータを比較したところ、同じ幹細胞から生み出されたペア同士の染色体テリトリー配列の相関がそれ以外に比べ高い傾向にあることが分かった。Hi-C解析とは別個に解析を進めている娘細胞ペアの1細胞RNA-seq解析では、UMAP解析データから、多くは娘細胞同士が似たプロファイルを示し対称性分裂が想定される中で、一部の娘細胞ペアの片方のみ異なるプロファルを示すものが同定されており、非対称性分裂がある一定頻度で起こっているものと考えられた。このようなデータを高次クロマチン構造と統合することにより、造血幹細胞のクロマチン複製様式とその自己複製・分化の運命制御を明らかにする。分担研究者の北村は、造血器腫瘍で認められるC末端欠失型ASXL1変異(ASXL1-MT)の機能解析を行い、ASXL1-MTが造血幹細胞の細胞周期亢進・ミトコンドリア活性化・ROS上昇を介してDNAダメージをもたらし、造血幹細胞数・機能の低下を誘導すること(Nat Commun, 2021)、ASXL1-MTノックインマウスでは炎症性マクロファージが増加し、動脈硬化が増悪すること、ASXL1-MTはBAP1と協調してH2AK119Ubの脱ユビキチン化を介して下流のオンコジーン発現を誘導し、白血病発症を増強すること (Blood, 2020)を明らかにした。。
2: おおむね順調に進展している
造血幹細胞の細胞分裂により生み出される2つの娘細胞の細胞形質と高次クロマチン構造をペアとして1細胞解析するアプローチとして、Hi-CデータとRNA-seqデータを同じ1細胞から同時取得するための新技術の開発に成功し、同じ幹細胞から生み出されたペア同士の染色体テリトリー配列の相関がそれ以外に比べ高い傾向にあることが確認された。また、多くの幹細胞が対称性分裂を行うことが想定される中で、一部の娘細胞ペアの片方のみ異なるプロファルを示すものが同定されており、非対称性分裂がある一定頻度で起こっていることを示唆するデータが得られた。
造血幹細胞の2つの娘細胞の高次クロマチン構造をペアとして1細胞解析する技術を用いて得られたデータを高次クロマチン構造と統合することにより、造血幹細胞のクロマチン複製様式とその自己複製・分化の運命制御を明らかにする。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Nature Communications
巻: 13 ページ: 2691
10.1038/s41467-022-30440-2
Leukemia
巻: 36 ページ: 452-463
10.1038/s41375-021-01402-2
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/molmed/