研究実績の概要 |
本課題では、①生命起動メカニズムの解明、②卵活性化機構の解明をメインテーマとし、さらに③精子エピゲノム獲得機構の解明をサブテーマ として研究を進めている。 ①生命起動メカニズムの解明:2019年度は、卵・卵巣特異的に発現する遺伝子群をリスト化、さらにin silico により細胞内局在を予測した。CRISPR/Cas9 により5遺伝子 (Oosp1, Oosp2, Oosp3, Cd46, Egfl6) についてKOマウスを作製し、交配テストを実施した。その結果、いずれの遺伝子も卵発生・機能や雌の妊孕性に必須でないことを明らかにして論文発表した。一方。Oosp1~3をまとめて抜き取ったところ、KOマウス由来の卵が受精すると桑実胚から胚盤胞への成長率が有意に低下した。このことは、卵で作られたOOSPタンパク質群が受精後の初期発生に重要な役割を果たしていることを示している。それ以外に、KOマウス由来の卵は受精できるものの2細胞期に分裂停止する新規遺伝子を同定することに成功した。 ②卵活性化機構の解明:受精卵は精子由来因子により活性化されるが、卵活性化が不十分であると、表層顆粒放出や前核形成に異常をきたし、全能性獲得不全となる。PLCZ1 以外に受精・活性化に影響する因子を探索して機能解析している中で、精子・卵の融合に必要な因子を複数同定した。卵活性化に及ぼす影響を検討している。 ③精子エピゲノム獲得機構の解明:分担者の篠原と協力して、精巣での精子形成から成熟に関わる因子を標的に受精・全能性発揮に必要な因子の探索を開始した。これまでに精巣由来因子で精巣上体の成熟を促す因子を同定しており、その下流シグナルと精子受精能力を検討中である。
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