研究領域 | 全能性プログラム:デコーディングからデザインへ |
研究課題/領域番号 |
19H05750
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊川 正人 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (20304066)
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研究分担者 |
篠原 隆司 京都大学, 医学研究科, 教授 (30322770)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / 精子成熟 / 受精 / 卵活性化 / 全能性 / 不妊 |
研究実績の概要 |
本課題では、①生命起動メカニズムの解明、②卵活性化機構の解明をメインテーマとし、さらに③精子エピゲノム獲得機構の解明をサブテーマ として研究を進めている。 ①生命起動メカニズムの解明:2021年度も引き続き、卵・卵巣特異的に発現する遺伝子について、CRISPR/Cas9 によりKOマウスを作製し、交配テストを実施した。10遺伝子のKOマウス系統を作って解析したところ、雌の妊孕性が低下した遺伝子が2つ、低下が認められなかった遺伝子が5つ、検討中の遺伝子が3つとなった。妊孕性低下を示した系統について、22年度以降に表現型解析を進める。 ②卵活性化機構の解明:受精卵は受精刺激により活性化される。PLCZ1 以外に受精・活性化に影響する因子を探索して機能解析している中で、卵との融合に必須な因子としてDcst1/Dcst2の2因子を新たに同定して機能解析を行い、論文報告した。またIZUMO1をノックアウトしたラットを作製したところ、IZUMO1は精子と卵の融合というよりも、結合不全の表現型がみられた。精子と卵の融合メカニズムについて考え方を再構築する必要がある。 ③精子エピゲノム獲得機構の解明:精巣の精細胞から分泌されるNELL2がルミクリン因子として働き、精巣上体の成熟および結果として精子受精能力を成熟させることに着目して解析を進め、NELL2と結合してルミクリン因子として働く新規タンパク質を同定した。その他、精巣上体から分泌されるリポカリンファミリーが、精子成熟に相加的に働くことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
卵特異的に発現する遺伝子群についてKOマウスの作製と解析は順調に進んでいる。21年度は5つの因子が必須でないことを明らかにすると同時に、必須因子も2つ同定できた。2022年度以降は解析に重点を移すことができる。そのほか、40年来の謎であったルミクリンの機構解明も着実に進み新規遺伝子を同定できている。IZUMO1が融合よりも結合に働く明確な証拠を示し、新規に融合必須因子を同定するなど、受精メカニズムの解明に向けて、着実に成果が上がっている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、篠原の得意とするGS細胞、伊川が得意とするゲノム編集のメリットを活用し、受精および卵活性化・受精後発生に寄与する因子の同定と機能解析を進める。しかしながら、コロナウイルス感染症対策もあり、動物飼育の見通しも不透明であるため、試験管培養を用いたアプローチなど代替策を検討する。
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