本課題では、①生命起動メカニズムの解明、②卵活性化機構の解明をメインテーマとし、さらに③精子エピゲノム獲得機構の解明をサブテーマ として研究を進めている。 ①生命起動メカニズムの解明:2023年度も引き続き、卵・卵巣特異的に発現する遺伝子について、CRISPR/Cas9 によりKOマウスを作製し、交配テストを実施した。15遺伝子のKOマウス系統を作って解析したところ、妊孕性試験を終えた8遺伝子のうち、雌の妊孕性が低下した遺伝子が2つ、低下が認められなかった遺伝子が6つであった。また、これまでに解析を終えた、卵・卵巣特異的に発現しても雌の妊孕性に影響しない12遺伝子をまとめて論文投稿した。 ②卵活性化機構の解明:卵減数分裂期停止によるヒト不妊症の原因遺伝子と考えられており、卵特異的に発現するWee2 (Wee1 like protein kinase 2)を欠損したマウスを作製して解析を行ったが、Wee2欠損マウスの妊孕性はほぼ正常であり、卵形成にも異常は認められなかった。このほか、国際共同研究により、ZP2微細変異マウスを作製し受精時のZP2切断による多精子受精防止メカニズムについて知見をまとめ論文報告した。 ③精子エピゲノム獲得機構の解明:Tex46をKOすると精子頭部奇形を引き起こし、雄性不妊となることを見出し論文報告した。精巣上体の成熟を制御するOVCH2のドメイン機能探索を実施、CUBドメインが不要であることを明らかにした。なお、分担者の篠原らは、精巣精子を用いた顕微授精や体外受精を繰り返すことで、奇形や行動異常が子孫で増加することを見出し論文報告した。
|