研究領域 | 「生命金属科学」分野の創成による生体内金属動態の統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
19H05761
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
城 宜嗣 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (70183051)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 生体鉄 / 鉄動態 / トランスポーター / センサータンパク質 / 構造解析 / ヘム鉄 |
研究実績の概要 |
1.へムを活性中心に含む根粒菌の酸素センサータンパク質FixL/FixJシステムを研究対象に構造機能解析を行った。昨年度明かにしたFixLの酸素センサードメイン(TandemPASdomain)の結晶構造を基盤に、分子内シグナル伝達機構を明らかにするために、いくつかの変異体を作製しそれらの自己リン酸化活性を測定した。また、FixJ全長の溶液構造と細胞内での構造の差異を明らかにするために、変異により常磁性金属の結合部位を導入した。 2.病原菌のヘムセンサータンパク質PefRの研究成果を論文として報告した。 3.病原菌の鉄取込みポンプ(インポーター)の溶液構造解析(低温電子顕微鏡(クライオEM))を高い分解能で成功させる目的で、anphipholeによる可溶化を試みた。その試料の構造解析には成功したが、まだ分解能は低かった。 4.ヒトの小腸での鉄吸収で重要な機能を果たしている鉄還元酵素(Dcytb)の結晶構造を基盤に、その機能を細胞内で評価するシステムを構築している。ヒト腸管のモデル細胞であるCaco-2細胞の細胞膜にDcytbを発現させる事に成功し、この評価システムを用いて、様々な化合物そんざいかでの鉄取り込み効率を評価した。その結果、フルクトースが細胞への鉄取り込みを促進することを見出した。 5.また、Dcytbで還元された鉄を腸管細胞に取込む際に機能するトランスポーター(DMT1)の発現精製を開始した。当初は、大腸菌、酵母、昆虫細胞をホストとして用いたが成功しなかった。そこで、CHO細胞をホスト細胞としたところ、発現が確認できた。現在精製条件の検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.FixL Tandem PAS domainの構造解析の結果を早急に報告する必要がある。全長FixJのNMR構造解析は順調に進んでいる。 2.病原菌のヘムセンサータンパク質PefRのヘム感知機構を提案したが、ヘム結合後のPefRはミオグロビンなどと同様にヘムタンパク質として機能することがわかった。 3.ヘムインポータのクライオEM解析は、今は測定に適した試料を作成する目的で、ナノデスク作成の条件を検討中である。 4.ヒト小腸での鉄吸収を可視化するモデル細胞の構築は順調に進んでいる。CHO細胞を用いて鉄トランスポーター(DMT1)の発現を確認し、単離精製のプロトコールを検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
1.常磁性金属を活用して全長FixJのin vitro NMR構造解析を進める。同時に、in cell NMR測定の準備も進める。 2.ヘム結合型のヘムセンサータンパク質PefRの構造機能解析を進める。 3.病原菌のヘムインポーターのクライオEM用の試料を作成(ナノデスク)条件を確定させる。caged ATPを用いた時間分解分光測定を行う。 4.ヒト小腸での鉄吸収のモデル細胞の安定株を構築する。それを用いて、Dcytbの各種変異体の機能解析や鉄錯体のキレーターの評価を行う。Dcytbに加えてDMT1の発現も試み、ヒト小腸での鉄取込むの全体像の可視化をめざす。DMT1の単離精製法を確立し、クライオ電子顕微鏡を用いた構造解析を開始する。DMT1とDcytbの複合体の結晶化を開始する。
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