研究領域 | 「生命金属科学」分野の創成による生体内金属動態の統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
19H05766
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
津本 浩平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90271866)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 病原性微生物 / 金属取り込み / 低分子化抗体 / 低分子化合物 / 物理化学 |
研究実績の概要 |
本研究では、病原性微生物である化膿レンサ球菌および黄色ブドウ球菌を標的とし、鉄取り込み系で機能するタンパク質群の機能阻害に基づいた抗菌剤開発を目指している。 本年度は、化膿レンサ球菌において機能する3種の鉄取り込み経路のうち、遊離金属およびシデロフォアを介した取り込み系に対して、低分子化抗体を活用した機能阻害分子の取得ならびに解析を行った。MtsAに対しては、単独では阻害機能を持たない複数の低分子化抗体を連結したバイパラトピック抗体(BpAb)を設計し、その阻害効果について検証を行った。大腸菌発現系を用いてBpAbを発現精製し、等温滴定型熱量測定によって金属結合阻害について検証したところ、金属結合の阻害が確認された。各種生化学的/物理化学的解析によって複合体の分子状態を精査し、MtsA-BpAbが複数の分子間での相互作用を介した会合体を形成していることが示唆された。さらに、scFvとVHHをつなぐリンカーを改変することにより分子内結合によるヘテロダイマーを形成するようなBpAbの作製にも成功し、さらにそのBpAbによってもMtsAの金属結合が阻害されることが確認された。 FtsBについては、FtsBとFerrichrome複合体の結晶構造を取得し、更にその構造を基にして結晶構造中でリガンドと相互作用している残基に変異を入れた変異体を作製、それぞれの変異体について物理化学的手法によって相互作用解析を行う事により、FtsBによるリガンド認識機構を原子レベルで明らかにすることに成功した。さらに、FtsBをアルパカに免疫し、ファージディスプレイ法を用いてVHH抗体を取得し、FtsBに結合することを確認した後、ITCによってFtsBによるFerrichrome結合の阻害について検証したところ、こちらについても見事リガンド結合を阻害することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成果として、本研究で標的としている化膿レンサ球菌の鉄取り込み経路のうち、2種の鉄取り込み系で機能するタンパク質群に対し、いずれも機能を阻害する抗体分子の取得に成功している。さらに、それぞれの機能阻害についてその分子機構を精査しており、それら解析に基づく高機能化を進めている。COVID-19の影響により、当初の計画よりも研究の進展が遅れていたが、研究費を繰越して予定していた実験を次年度に実施し、当初見込まれていた研究計画を遂行することができている。
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今後の研究の推進方策 |
化膿レンサ球菌および黄色ブドウ球菌の各経路に対してこれまでに取得してきた機能阻害分子について、引き続き分子機構の解明および高機能化を目指す。また、微生物を用いた抗菌活性の評価についても並行的に解析を進め、in vitroでの機能阻害活性とin vivoでの抗菌活性との相関を明らかにする。さらに、現在得られている化合物および抗体を基盤とし、他分子種を活用した阻害剤についても設計を進め、標的分子の物理化学的解析に基づく合理的な阻害剤設計手法の構築を目指す。
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