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2021 年度 実績報告書

細胞内生命金属動態で理解する腎臓の生理機能制御

計画研究

研究領域「生命金属科学」分野の創成による生体内金属動態の統合的研究
研究課題/領域番号 19H05770
研究機関徳島文理大学

研究代表者

藤代 瞳  徳島文理大学, 薬学部, 講師 (10389182)

研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2024-03-31
キーワード有害金属 / 生命金属 / 腎障害 / 近位尿細管 / カドミウム / シスプラチン / 元素イメージング / 組織内分布
研究実績の概要

私たちは、有害金属(Cd)や金属(Pt)含有薬物が引き起こす腎障害機構と有害金属による生命金属動態の攪乱作用の解明を目指している。
イタイイタイ病のようなCd腎症を完全に再現することはできなくても、近位尿細管における再吸収障害のモデルとして、Cd-MT投与モデル検討した。短期間でCd-MT複合体を投与し、元素イメージングによるCdの分布、および腎障害に関する指標の経時変化を解析した結果、腎臓におけるCd分布は、Cd-MT投与後3~8時間では、Cdは皮質の辺縁部から皮質全体に分布していたが、18時間から3日後では髄質に近いS3領域が豊富な領域にも分布した。今後この実験モデルを用いてCdによる腎障害の特徴であるファンコニー症候群発現メカニズムを解析するため、リン、Ca再吸収障害発症機構を明らかにしていきたい。
CDDPによる腎障害には活性酸素(ROS)の産生が関与していることが報告されている。そこで、S1, S2, S3細胞間での酸化ストレスに対する応答について比較検討した。CDDPおよびROSを産生するパラコート曝露により、24時間後の細胞内ROS量がS1, S2細胞に比べてS3細胞で顕著に高かった。S3細胞のCDDP高感受性にROS産生が関与することが示唆されたため、S1, S2, S3細胞にCDDPを曝露して、抗酸化システムを担うタンパク質発現量を調べた。コントロールレベルのこれらのタンパク質の発現量は、S3細胞で特に発現量が低くなかった。一方、チオレドキシン、チオレドキシン還元酵素、γ-グルタミルシステイン合成酵素、ヘムオキシゲナーゼの発現量が、S3細胞においてのみCDDP曝露により減少していた。よって、S3細胞がCDDPに対して高い感受性を示す原因の1つとしてCDDPによるROS消去能の低下が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Cdによる腎障害機構を解明するために、in vivoおよびin vitro系の両方を活用し検討を行ってきた。昨年度までに、マウスへのCd-metallothionein(Cd-MT)複合体モデルを用いて、投与後1-3時間では皮質側に分布し、その後8-18時間経過すると皮質と髄質の境界領域へと分布することを明らかにした。これらの結果を、CDDPおよびPt含有薬物投与マウスの腎臓におけるPtの分布についても応用可能である。Laser Ablation-ICP-MSによる元素イメージングにより毒性の発現と金属局在との関係を明らかにする系を確立しつつある。
一方、これまでに腎臓近位尿細管由来不死化細胞を用い、in vitroでの低分子量タンパク質(β2-MG, MT)の再吸収効率および金属輸送を解析する系を樹立した。その系を活用して、CdCl2曝露による近位尿細管再吸収効率が低下や、ミトコンドリア機能タンパク質の発現変化を見いだした。今後は、CdCl2による再吸収効率低下のメカニズムを明らかにする。CDDPについてはROSおよび抗酸化システムの関与が示唆されたため、さらに詳細な変化について培養細胞と動物を用いて検討する。また、様々な腎障害誘発金属の細胞内鉄濃度への影響も明らかにしたい。

今後の研究の推進方策

元素イメージングを活用した有害金属の局在については、またin vivo だけでなく、in vitroでのこれらの細胞内局在をまた、Cd, CDDP, ウランの細胞内局在については、Spring8を用いて、査型顕微分光計測装置での細胞内局在の検討を行う(研究協力者松川、B01-1小椋、B01-4武田との連携研究)。また、腎障害誘発金属(CDDPやウラン)が近位尿細管の特にS3領域を障害するが、その機構はわかっていない。CDDPの腎障害にROSの関与が報告されているため、CDDP曝露による抗酸化システムの変化を調べた結果、TrxとTxnrdの発現低下が関与している可能性を見出した。そこで、有害金属による近位尿細管障害のメカニズムを明らかにするため、Cdによるミトコンドリア機能障害については、生理学研究所にて、Cd投与マウスの腎臓におけるミトコンドリア形態異常が起こっているか電子顕微鏡で解析し、CDDPについても解析し、比較検討する(第1期公募A01西田との連携研究)。
これまでにA03-1神戸との連携研究により、腎臓におけるCd, Mn輸送体ZIP8の役割を検討してきた。近年、多くの疾患とZIP8をコードするSLC39A8のSNP(rs13107325)との関連が次々と報告され、その変異のMn輸送への影響や金属結合モチーフについて解析し、ZIP8のTransmembrane domain5のE-H motifがMn、Cdの輸送活性を与えている可能性を見出した。今後、様々な変異による金属輸送およびZIP8の構造変化を解析し(第1期公募B01重田との連携研究)、腎臓におけるZIP8によるMn恒常性の調節機構を明らかにしたい。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Manganese transport in mammals by zinc transporter family proteins, ZNT and ZIP2022

    • 著者名/発表者名
      Fujishiro Hitomi、Kambe Taiho
    • 雑誌名

      Journal of Pharmacological Sciences

      巻: 148 ページ: 125~133

    • DOI

      10.1016/j.jphs.2021.10.011

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Comparisons of segment-specific toxicity of platinum-based agents and cadmium using S1, S2, and S3 cells derived from mouse kidney proximal tubules2021

    • 著者名/発表者名
      Fujishiro Hitomi、Taguchi Hiroki、Hamao Satoko、Sumi Daigo、Himeno Seiichiro
    • 雑誌名

      Toxicology in Vitro

      巻: 75 ページ: 105179~105179

    • DOI

      10.1016/j.tiv.2021.105179

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Single-Cell Imaging for Studies of Renal Uranium Transport and Intracellular Behavior2021

    • 著者名/発表者名
      Homma-Takeda Shino、Fujishiro Hitomi、Tanaka Izumi、Yakumaru Haruko、Ayama Kyoko、Uehara Akihiro、Oikawa Masakazu、Himeno Seiichiro、Ishihara Hiroshi
    • 雑誌名

      Minerals

      巻: 11 ページ: 191~191

    • DOI

      10.3390/min11020191

    • 査読あり
  • [雑誌論文] マンガン,カドミウムの必須性・毒性を左右する亜鉛輸送体の役割2021

    • 著者名/発表者名
      姫野 誠一郎, 藤代 瞳
    • 雑誌名

      薬学雑誌

      巻: 141(5) ページ: 695-703

    • 査読あり
  • [学会発表] 腎臓におけるカドミウム動態解析とその毒性発現機構2022

    • 著者名/発表者名
      高岡理奈, 藤代瞳, 松本可南子, 久保田章乃, 松川岳久, 横山和仁, 竹内久美子, 姫野誠一郎, 角大悟
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [学会発表] シスプラチン曝露による近位尿細管S3領域の毒性発現機構の検討2022

    • 著者名/発表者名
      田口央基, 藤代瞳, 姫野誠一郎, 角大悟
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [学会発表] ヒト腎臓近位尿細管由来不死化細胞を用いた再吸収障害機構の検討2022

    • 著者名/発表者名
      藤川真美, 増富由姫, 藤代瞳, 姫野誠一郎, 角大悟
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [学会発表] シスプラチンの近位尿細管領域特異的毒性発現とその機序の検討2021

    • 著者名/発表者名
      藤代瞳
    • 学会等名
      第48回日本毒性学会学術年会
    • 招待講演
  • [学会発表] シスプラチン曝露による近位尿細管S3領域の不可逆毒性発現機構の検討2021

    • 著者名/発表者名
      田口央基, 藤代瞳, 姫野誠一郎, 角大悟
    • 学会等名
      第60回日本薬学会・日本薬剤師会・日本病院薬剤師会中国四国支部学術大会
  • [学会発表] 近位尿細管S3領域のシスプラチンによる不可逆毒性発現機構の解析2021

    • 著者名/発表者名
      田口央基,藤代瞳,姫野誠一郎, 角大悟
    • 学会等名
      フォーラム2021:衛生薬学・環境トキシコロジー
  • [学会発表] 亜鉛輸送体ZIP8の金属結合モチーフがMn輸送に及ぼす影響の解析2021

    • 著者名/発表者名
      藤代瞳, 田口央基, 神戸大朋, 姫野誠一郎, 角大悟
    • 学会等名
      第32回日本微量元素学会学術集会
  • [学会発表] 近位尿細管S3領域のシスプラチンによる毒性発現機構の解析2021

    • 著者名/発表者名
      田口央基,藤代瞳, 姫野誠一郎,角大悟
    • 学会等名
      メタルバイオサイエンス研究会2021
  • [学会発表] カドミウム-メタロチオネイン複合体投与腎障害モデルの検討2021

    • 著者名/発表者名
      石崎友香,藤代瞳,松川岳久, 横山和仁, 姫野 誠一郎,角 大悟
    • 学会等名
      メタルバイオサイエンス研究会2021
  • [学会発表] 長期カドミウム曝露によるカドミウムの分布と腎機能の経時的変化2021

    • 著者名/発表者名
      北村はるか,藤代瞳,松川岳久, 横山和仁, 姫野誠一郎, 角大悟
    • 学会等名
      メタルバイオサイエンス研究会2021
  • [図書] Handbook on the Toxicology of Metals, Volume II. Fifth Edition2022

    • 著者名/発表者名
      S. Himeno, H. Fujishiro, D. Sumi
    • 総ページ数
      1011
    • 出版者
      Elsevier
  • [備考] 徳島文理大学薬学部薬物治療学研究室HP

    • URL

      http://p.bunri-u.ac.jp/lab10/index.html

  • [備考] 生命金属科学(IBmS)

    • URL

      https://bio-metal.org/

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公開日: 2022-12-28  

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