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2022 年度 実績報告書

細胞内生命金属動態で理解する腎臓の生理機能制御

計画研究

研究領域「生命金属科学」分野の創成による生体内金属動態の統合的研究
研究課題/領域番号 19H05770
研究機関徳島文理大学

研究代表者

藤代 瞳  徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (10389182)

研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2024-03-31
キーワードマンガン / ZIP8 / シスプラチン / 腎臓 / 輸送 / 近位尿細管 / フェロトーシス / 金属
研究実績の概要

シスプラチン(CDDP)による近位尿細管S3領域特異的障害機構を解明するため、マウス近位尿細管S1, S2, S3領域由来不死化細胞を用いて検討した。S3細胞のCDDP高感受性の原因を明らかにするため、活性酸素種(ROS)の関与を検討した。CDDPを添加後の細胞内ROS産生量は、S1, S2細胞と比べてS3細胞で顕著に高かった。また、抗酸化剤であるTroloxによりS3細胞におけるCDDPによる細胞毒性が抑制されたため、S3細胞のCDDP高感受性にROSが関与していることが示唆された。S3細胞で、細胞内遊離Fe2+量がS1, S2細胞よりも高値を示し、フェントン反応を介して酸化力の高いヒドロキシラジカルを産生しやすい環境にあることがわかった。CDDP曝露後の抗酸化タンパク質のTrx, TrxR発現量が、S3細胞においてのみ低下した。一方、CDDP曝露後の過酸化脂質量を調べた結果、S3細胞の過酸化脂質量が著しく高かった。以上の結果から、CDDPに対するS3細胞高感受性には、ROS産生およびROSによる過酸化脂質の酸化が関与し、S3細胞はCDDPによるフェロトーシスが誘発されやすい環境であることが示唆された。
Mn輸送体のZIP8の役割を検討した。Znしか輸送しない多くのZIPは、Zn結合サイトとしてTMD5にHHXPHEモチーフを有するが、Zn以外にMn、Cdも輸送可能なZIP8、ZIP14はHEXPHEとなっていることに着目し、H-HペアがZnのみ、E-HペアがZnだけでなくMn、Cdにも親和性を示すのではないかと予測した。そこで、MDCK細胞を用いて野生型hZIP8(E343),変異型(E343H),(E343A)発現細胞を作成し、Mn、Cd、Zn取り込み効率を検討した結果、Mn、Cd、Znの取り込み効率がどちらの変異体でも顕著に低下することを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

マウス近位尿細管由来細胞を用いてCDDPの近位尿細管S3領域高感受性原因を検討した結果、S3細胞ではCDDPによるフェロトーシスが誘発されやすい環境であることを見出した。引き続き詳細な機構の解明を目指す必要がある。
また、CDDPやCdの腎臓内分布と毒性発現との関与について元素イメージングを用いて解析しているが、LA-ICP-MSに加えて、PIXIによる腎臓内CdおよびPtイメージング、microXAFS(Spring8)による検討も開始した。近位尿細管領域特異的細胞におけるCdおよびPtイメージングによりさらに細胞内Cd, Pt局在を詳細に解析していく。
Mn輸送体のZIP8の立体構造は解明されていないため、疾患と関わるZIP8の変異やMn輸送に重要であるアミノ酸E343の金属輸送における役割を解析したが、この変異によるZIP8の構造変化が重要であるため、構造予測の検討を開始。E343以外にもZIP8およびZIP14に特異的なアミノ酸や、日本で発見されたMn代謝異常症の患者に変異が見られるアミノ酸の役割も今後検討する必要がある。

今後の研究の推進方策

マウス近位尿細管由来細胞を用いてCDDPの近位尿細管S3領域高感受性原因を検討した結果、S3細胞ではCDDPによるフェロトーシスが誘発されやすい環境であることを見出した。引き続き詳細な機構の解明を目指す必要がある。
また、CDDPやCdの腎臓内分布と毒性発現との関与について元素イメージングを用いて解析しているが、LA-ICP-MSに加えて、PIXIによる腎臓内CdおよびPtイメージング、microXAFS(Spring8)による検討も開始した。近位尿細管領域特異的細胞におけるCdおよびPtイメージングによりさらに細胞内Cd, Pt局在を詳細に解析していく。
Mn輸送体のZIP8の立体構造は解明されていないため、疾患と関わるZIP8の変異やMn輸送に重要であるアミノ酸E343の金属輸送における役割を解析したが、この変異によるZIP8の構造変化が重要であるため、構造予測の検討を開始。E343以外にもZIP8およびZIP14に特異的なアミノ酸や、日本で発見されたMn代謝異常症の患者に変異が見られるアミノ酸の役割も今後検討する必要がある。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Spatial localization of cadmium and metallothionein in the kidneys of mice at the early phase of cadmium accumulation.2022

    • 著者名/発表者名
      H. Fujishiro, M. Sumino, D. Sumi, H. Umemoto, K. Tsuneyama, T. Matsukawa, K. Yokoyama, S. Himeno
    • 雑誌名

      J. Toxicol. Sci.

      巻: 47(12) ページ: 507-517

    • DOI

      10.2131/jts.47.507.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Effects of individual amino acid mutations of zinc transporter ZIP8 on manganese- and cadmium-transporting activity.2022

    • 著者名/発表者名
      H. Fujishiro, S. Miyamoto, D. Sumi, T. Kambe, S. Himeno
    • 雑誌名

      Biochem. Biophys. Res. Commun.

      巻: 616 ページ: 6-32

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2022.05.068

    • 査読あり
  • [学会発表] カドミウム-メタロチオネイン複合体投与腎障害モデルマウスにおけるCa, Pi再吸収障害2023

    • 著者名/発表者名
      〇石崎友香、藤代瞳、松本可南子、竹内久美子、姫野誠一郎、角大悟.
    • 学会等名
      日本薬学会第123年会
  • [学会発表] メタロチオネイン欠損マウスへの塩化カドミウム投与時の尿中リン、カルシウム排泄の亢進2023

    • 著者名/発表者名
      〇仲松美咲、藤代瞳、松本可南子、川上隆茂、姫野誠一郎、角大悟.
    • 学会等名
      日本薬学会第123年会
  • [学会発表] 近位尿細管領域由来細胞を用いたシスプラチンによる細胞傷害メカニズムの解明2023

    • 著者名/発表者名
      ◯田口央基、藤代瞳、冨塚祐希、桑田浩、原俊太郎、姫野誠一郎、角大悟、
    • 学会等名
      日本薬学会第123年会
  • [学会発表] GSH分解酵素CHAC1による亜ヒ酸毒性の増強作用の解析2023

    • 著者名/発表者名
      ◯日裏晃大、佐藤友理、田口央基、竹内久美子、藤代瞳, 角大悟
    • 学会等名
      日本薬学会第123年会
  • [学会発表] Alterations in renal cadmium distribution and phosphate reabsorption by the administration of cadmium-metallothionein in mice.2022

    • 著者名/発表者名
      〇Hitomi Fujihsiro, Seiichiro Himeno.
    • 学会等名
      The 8th International Symposium on Metallomics (ISM-8)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 腎臓の部位特異的な微量元素輸送機構の解明.2022

    • 著者名/発表者名
      〇藤代瞳
    • 学会等名
      第33回日本微量元素学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 亜鉛トランスポーターZIP8のアミノ酸変異がマンガンおよびカドミウム輸送活性に与える影響2022

    • 著者名/発表者名
      〇藤代瞳
    • 学会等名
      メタルバイオサイエンス研究会2022
    • 招待講演
  • [学会発表] A new and old question, how does cadmium cause kidney injuries.2022

    • 著者名/発表者名
      〇Hitomi Fujishiro.
    • 学会等名
      10th Asian Biological Inorganic Chemistry (AsBIC10)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Roles of cadmium distribution and metallothionein in cadmium-induced renal injury.2022

    • 著者名/発表者名
      〇Hitomi Fujishiro
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会
    • 招待講演
  • [学会発表] カドミウム腎障害によるリン、カルシウム再吸収障害モデルの構築2022

    • 著者名/発表者名
      ◯藤代瞳,松本可南子, 竹内久美子,姫野誠一郎, 角大悟
    • 学会等名
      第49回日本毒性学会学術年会
  • [学会発表] 腎尿細管領域由来S3細胞における細胞内ウラン分布解析2022

    • 著者名/発表者名
      〇Shino Homma-Takeda, Hitomi Fujishiro, Izumi Tanaka, Haruko Yakumaru, Kyoko Ayama, Akihiro Uehara, Masakazu Oikawa, Oki Sekizawa, Kiyofumi Nitta, Seiichiro Himeno, and Hiroshi Ishihara
    • 学会等名
      第49回日本毒性学会学術年会
  • [学会発表] シスプラチンに対する近位尿細管S3領域の高感受性に関与する抗酸化システム2022

    • 著者名/発表者名
      〇田口央基、藤代瞳、姫野誠一郎、角大悟
    • 学会等名
      第49回日本毒性学会学術年会
  • [学会発表] 近位尿細管S3領域由来細胞に対するシスプラチン、パラコート、Erastinの細胞毒性発現機構の比較2022

    • 著者名/発表者名
      ◯田口 央基、藤代瞳、姫野誠一郎、角大悟.
    • 学会等名
      フォーラム2022衛生薬学・環境衛生
  • [図書] Chapter 6: Bismuth. in “Handbook on the Toxicology of Metals, Volume II. Fifth Edition”2022

    • 著者名/発表者名
      S. Himeno, H. Fujishiro, D. Sumi
    • 総ページ数
      1011
    • 出版者
      Elsevier (Eds. Nordberg, G. and Costa, M.)
    • ISBN
      978-0-12-822946-0
  • [備考] 徳島文理大学薬学部薬物治療学研究室HP

    • URL

      http://p.bunri-u.ac.jp/lab10/index.html

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公開日: 2023-12-25  

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