計画研究
本新学術領域の目標の一つは、時間分解結晶構造解析を軸としたタンパク質のダイナミクス研究を他分野と複合的に融合させて、タンパク質を設計・制御・操作する新しい学問領域を形成することである。そこで本研究では、時間分解結晶構造解析と時間分解分光法(紫外可視吸収、ラマン、赤外、蛍光)との相関的・補完的解析を推進し、時間分解結晶構造解析と他手法との融合の先鞭をつける。本年度は、各分光法について、タンパク質微結晶に適用できる時間分解測定技術の開発に取り組んだ。・紫外可視吸収分光:240-700 nmの広波長範囲を測定できる時間分解顕微分光装置を開発し、新規ロドプシン微結晶の光反応観測に応用した。現在、その分光結果を参照して、時間分解結晶構造解析を進めている。今後は、DNAフォトリアーゼなど他の系へと適用範囲を拡げる。・赤外分光:新規ロドプシン類(溶液系)の時間分解測定に成功し、光反応サイクルの速度や構造変化を観測した。また、微結晶への適用に向けて、顕微測定用の赤外分光セルを開発した。今後は、時間分解結晶構造解析との相補解析に向けて、微結晶の時間分解測定にも取り組む。・ラマン分光:ポンプレーザーを導入し、顕微ラマン光学系を構築した。今後は、ヘム酵素をモデル試料に用いて、時間分解顕微測定系の開発を進める。・蛍光分光:微結晶とリガンドを急速混合する二液混合ミキサーを開発し、Ca2+感受性発光タンパク質イクオリンの時間分解蛍光測定に成功した。今後は分光器を導入し、波長選択的な解析を進めるとともに、時間分解結晶構造解析の実験条件を決定する。
2: おおむね順調に進展している
すべての分光法について計画通りに顕微測定系の開発が進んでいる。紫外可視吸収分光においては、すでに新規ロドプシンの系に適用し、時間分解X線結晶構造解析に進んでいる。
紫外可視吸収分光においては、DNAフォトリアーゼを主たる研究対象とし、DNA光修復反応の中間体を時間分解測定で捉える。赤外分光においては、新規ロドプシン類やヘム酵素をモデルに、微結晶の時間分解測定に取り組む。またラマン分光においても、時間分解顕微測定系の開発を進める。蛍光分光においては、分光器を導入して二液混合系の顕微蛍光分光装置を完成させ、イクオリン微結晶に適用する。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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