計画研究
本研究では溶液測定に加えて、タンパク質微結晶を測定できる顕微分光技術を開発し、時分割結晶構造解析(分子動画法)と時分割分光法(紫外可視吸収分光、ラマン・赤外分光、蛍光分光)との相関的・補完的解析を推進する。多くの研究試料を扱うが、それらは新学術領域「高速分子動画」において研究されている試料である。以下、各分光法毎に本年度の装置開発実績及び研究実績を記す。・紫外可視吸収分光:(微結晶測定)光遺伝学ツール・チャネルロドプシンの結晶相におけるダイナミクスを解明した。その分光データと時分割結晶構造解析との相関解析により、チャネルロドプシンの光誘起チャネル開口のメカニズムを解明した。新規ロドプシン類の測定も終えており、時分割結晶構造解析との相関解析を進めている。(溶液測定)顕微装置にマイクロ流路デバイスを組み込んだ極微量フロー測定により、嫌気呼吸の鍵酵素cNORの反応中間体同定に成功した。・赤外分光:(微結晶測定)微結晶に適用できる顕微時分割赤外分光装置の開発を完了した。N2O発生酵素P450norに装置を適用し、反応中間体の電子状態解明に成功した。(溶液測定)DNAフォトリアーゼの反応中間体を捉えることに成功した。現在、反応中間体の化学構造決定を目指し、同位体試料の測定を試みている。・ラマン分光:(微結晶測定)昨年度に引き続き、時分割顕微測定系の開発を進めている。一方、凍結結晶に対する測定系を整備し、P450酵素への適用を進めている。(溶液測定)二液混合系のstopped-flow測定装置を完成させた。・蛍光分光:(微結晶測定)二液混合系の時分割蛍光分光装置に分光器を導入した。今後、Ca2+感受性イクオリンに適用する。(溶液測定)Stopped-flow法を用いて、イクオリンの蛍光ダイナミクスを測定した。現在、発光過程の分子モデルを構築するための速度論解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
顕微測定系の開発が概ね計画通りに進展しており、新しい技術を用いた研究成果も出始めているため。
顕微装置開発を継続して進めるとともに、開発済みの装置を活用して時分割分光研究を推し進める。具体的には、新学術領域が力を入れている研究試料の一つである新規ロドプシン類の紫外可視吸収・赤外分光解析をさらに進め、時分割構造解析と併せて反応中間体の構造を明らかにする。また、反応中間体を捉えたDNAフォトリアーゼの紫外可視吸収・赤外分光解析を進める。同位体試料等を用いて反応中間体の化学構造決定を目指す。その他、stopped-flowラマン分光装置のヘム酵素への応用やイクオリンの発光反応解析を進めていく。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 図書 (2件)
eLife
巻: 10 ページ: e62389.
10.7554/eLife.62389
Biomolecules
巻: 11 ページ: 96
10.3390/biom11010096
Bull. Chem. Soc. Japan
巻: 93 ページ: 825-833
10.1246/bcsj.20200038
Angew. Chem. Int. Ed.
巻: 59 ページ: 13385-13390
10.1002/anie.202004733
J. Am. Chem. Soc.
巻: 142 ページ: 15305-15319
10.1021/jacs.0c05108
J. Phys. Chem. Lett.
巻: 11 ページ: 8604-8609
10.1021/acs.jpclett.0c02383
Biochem. Biophys. Rep.
巻: 21 ページ: 100730
10.1016/j.bbrep.2020.100730
放射光
巻: 33 ページ: 266-270