計画研究
本新学術領域の目標の一つは、時間分解結晶構造解析(分子動画)を軸としたタンパク質のダイナミクス研究を他分野と複合的に融合させて、タンパク質を設計・制御・操作する新しい学問領域を形成することである。そこで本研究では、分子動画と時間分解分光法(紫外可視吸収分光、ラマン・赤外分光、蛍光分光)との相関的・補完的解析を推進し、分子動画と他手法との融合の先鞭をつける。本研究では溶液測定に加えて、タンパク質微結晶を測定できる顕微測定技術を開発し、分子動画との相補解析を強く推進することを課題としてきたが、これまでに上記すべての分光法について顕微技術開発を完了している。現在、新規ロドプシン、ヘム酵素、DNAフォトリアーゼ、発光タンパク質等、分子動画研究の対象試料の分光計測を推進している。いずれも光や金属を巧みに利用するタンパク質であり、動的機能原理に興味が持たれる。本年度の分光研究の主な成果は、(1)DNAフォトリアーゼの中間体化学種の同定、(2)一酸化窒素還元酵素中間体の鉄二核中心の構造同定、(3)チトクロム酸化酵素阻害剤の作用機序解明、(4)ヘリオロドプシンZn2+結合サイトの同定、(5)巨大イオンチャネル・ベストロドプシンのレチナール光異性化プロセスの解明、(6)サーモフィリックロドプシンのプロトンポンプ機構解明、(7)発光タンパク質イクオリンの段階的Ca2+結合の解明、等であり、いずれも分光ならではの解析を行った結果である。
2: おおむね順調に進展している
計画研究において期待される多くのタンパク質の分光解析に成功している。上記(2)-(6)については学術誌に掲載済である。
DNAフォトリアーゼ及びイクオリンの分光解析結果を、理論計算や構造解析とつきあわせ、学術誌に投稿する。DNAフォトリアーゼについては、さまざまな生物種間で反応ダイナミクスが異なることが見えてきているので、それらを比較し分子進化との関連を調べる。また、様々な微生物ロドプシンについて脂質二重膜への配向が整った条件下での動的構造変化を明らかにする。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 3件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件) 図書 (2件) 産業財産権 (1件)
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