研究領域 | 機能コアの材料科学 |
研究課題/領域番号 |
19H05787
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
溝口 照康 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (70422334)
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研究分担者 |
世古 敦人 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10452319)
柴田 基洋 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (40780151)
豊浦 和明 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60590172)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 機能コア / 界面 / 表面 / 転位 / 機械学習 / 第一原理計算 / 機械学習ポテンシャル / 格子欠陥 |
研究実績の概要 |
機能コアは格子欠陥が持つ幾何学的な自由度と外場の影響に伴う構造変化の自由度のため,その構造機能相関を理解することは容易ではない.本計画班は情報科学手法を活用した手法開発により機能コア開発を加速させる役割を担う. 2022年度までに48種の単体,120種の合金を対象とした高精度な機械学習ポテンシャルを開発した.それぞれの系において,幅広い構造から生成された数万程度のモデル構造について第一原理計算を行い,モデル構造とエネルギー・原子に働く力・応力のセットを準備し,それぞれのモデル構造を数万程度の構造特徴量へと変換し,構造特徴量とエネルギーの関係を回帰分析により推定した. さらに,機能コアのシミューレションには格子欠陥のモデリングが不可欠であるが,そのモデリングも幾何学的自由度の関係で容易ではない.そこで2022年度において,界面の結晶間の剛体変位の探索空間を最小化するための手法も開発した.同手法は,Coincidence of non-identical displacement(CNID)と称され,数学的には古くから知られていたものの,これまで実装されてこなかった.そこで,同手法を組み込んだモデリングコードを開発し公開した. また,イオン機能コアの理論解析のための手法開発も行ってきた.本研究ではマルコフ過程に基づく時間発展方程式のひとつであるマスター方程式を立式し,その数値解法により拡散係数を見積もる手法を開発した.この手法は,最終的に行列の固有値問題に帰着することから,従来法より高速かつ高精度な拡散係数評価を実現できる.また,拡散原子間の相互作用をジャンプ頻度に取り入れる方法論についても検討した. またコロナの影響も薄れ国際交流も再開し,2022年度において国際共同研究成果の発表や海外研究機関からの研究者受け入れも実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように,2022年度において,多元系を対象とする原子間ポテンシャルの手法開発を完了し,単元素金属に加えて,各合金系を対象とした原子間ポテンシャルを開発し公開している.すでに高精度ポテンシャルを用いて,領域内共同研究を実施し,たとえば,共通物質であるシリコンの界面に関して,熱機能コア解析を実施し,熱と界面構造との相互作用性や,熱による機能発現などの新発見に至っている.また,計測に対する機能コア解析支援のための機械学習手法の開発も行ってきた.スペクトルから取得される情報は通常は限定されているが,機械学習を利用することで多くの情報を一つのスペクトルから抽出可能なことを明らかにしている.また,機械学習ポテンシャル以外にも,界面機能コア解析や,機能コア計測,機能コアモデリングのための手法も開発するとともに,得られたデータをデータベースとしても公開している. さらに,2022年度においてはコロナ禍も薄れ,国内外の交流も再開しつつある.そのような中で,国際共同研究が成果としてpublishされたり,海外からの研究者の受け入れたりするど,国際的な活動に関しても進めてきた. 以上から,個々の手法開発に関する研究成果に加え, それぞれの手法の公開や,それらを用いた共同研究の進捗,さらに国際的な活動の再開などを鑑み,「おおむね順調に進展している.」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は,本新学術領域研究の最終年度となる.そのことを踏まえ,領域内の共同研究をさらに強力に推し進めるとともに,それに資することが出来るような新たな手法の開発を急ぐ.すでに,効な機械学習ポテンシャルをこれまで開発しており,同ポテンシャルの開発を続ける.一方で,格子欠陥に利用するには,局所安定に収束してしまうことも多く,大域的最安定構造探索の手法の開発が重要である.本研究で開発される機械学習ポテンシャルと大域的最安定構造探索法を併用することで,複雑な機能コアにおける諸現象をより高速かつ高精度に解析することが可能になることが期待される. 計測班ともこれまで同様に連携する.機能コアの複雑な系の計測では,その実験回数が限定される.そのような数少ない計測データから,多くの有益な情報を取得可能な手法の開発を進める.具体的には,スペクトル生成の物理をデータ科学的に超えるような手法の開発に取り組む. また,プロセス班との連携もさらに深め,新しい材料探索につなげる.現在までに,イオン伝導体や磁性材料に関する第一原理解析を進めてきた.2023年度においても,各種電気化学デバイスの電解質・電極材料として期待される種々イオン伝導性・電子-イオン混合伝導性材料の第一原理解析も継続し,イオニクス材料の開発を行う.さらに,データ駆動型の手法から得られた知見をプロセス班にフィードバックし,新しい機能コア材料の探索に貢献する. また,ポストコロナの動きが世界中で進み,各種出張・学会参加が可能になっている.2023年度においてはこれまで制限してきた出張や学会参加を積極的に行い,班内外・国際連携を活性化させる.
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