計画研究
(1)SnO2 (110)薄膜清浄表面作製とSTM原子分解能観察測定公募班から良質のSnO2ターゲットを提供していただき、我々が所有するPLD/AFM/STMを用いて原子レベルで解析を行った。まず、これまでSnO2の原子レベルで平坦な薄膜を実現した例がないために、PLDを用いた場合の作成条件の探索を行った。その結果、600度でSnO2が平坦化できることがわかり、それ以上の温度ではSnO2が基板内部に拡散してくことがわかってきた。次に、作製した表面をSTMおよび低速電子線回折(LEED)、X線回折(XRD)で解析を行った。その結果、試料表面が(110)面であることがわかり、表面が4x1構造に再構成していることがわかった。さらにこの表面を酸素雰囲気下でアニールすると1x1構造が現れることがわかった。(2)SrTiO3(100)表面のAFM/STM原子分解能機能コア解析SrTiO3は電子デバイスや光触媒等、様々な応用に用いられており、原子レベルでの解析の重要性はますます増えている。そこで、SrTiO3(100)-(R13xR13)清浄表面のAFM/STM原子分解能機能コア解析を行った。AFM測定では探針先端原子の状態によってコントラストが3種類存在することがわかった。過去のSTMと第一原理計算の結果および我々のグループにおけるSTM測定との比較から表面構造との対応を検討したが、AFM像で得られた原子レベルの輝点が表面の原子と一致しないことがわかった。表面のOH基と思われる部分のイメージングから、探針先端がおおよそ正および負、中性の状態によってコントラストが3種類あることがわかった。これはTiO2表面のAFM原子分解能測定でコントラストが3種類あることに類似している。
2: おおむね順調に進展している
上記以外の成果としては、(1)X線光電子分光によるルチルおよびアナターゼ表面のガス反応性のリアルタイム測定、(2)金属酸化物界面の初期成長を高分解能で調べるためのNC-AFM/STMシステムの開発、(3)窒化TiO2実現のための実験環境の構築、(4)局所的な電子状態を調べることができる新規のAFMの開発、(5)結晶成長のモデル材料として氷の結晶成長を観察できるNC-AFM/STMシステムの開発、(6)機械学習を用いた熱ドリフト完全補正走査プログラムの開発、(7)電源ノイズ低減システムの開発、(8)VO2表面における抵抗率測定、などを行った。「研究実績の概要」で述べた公募班との共同研究から、新規の金属酸化物材料においても機能コア清浄表面の作製方法が確立できたといえる。2022年度はさらに新規の材料へ展開する予定である。高速AFMを用いた光触媒実験では、TiO2とSrTiO3において分解速度の違いを見出すことができなかった。そこで、分解する対象である脂質二重層の種類を変えることで、光触媒の分解がOHラジカルによる脂質ラジカルの生成によることであると確認できた。
原子分解能のNC-AFM/STM測定に関しては、これまで研究がほとんどなされてこなかった種々の金属酸化物界面の評価を進める。具体的には、WO3やRuO3やCeO2のような実用上重要な金属酸化物表面の状態を詳細に調べる。高速AFMによる光触媒材料に関しては、実験環境が整いつつあるので、さらに様々な材料観察を行う予定でいる。具体的には、TiO2のアナターゼ型とルチル型との反応性の違い、AuやPtで担持した表面の光触媒ダイナミクスの観察を行う。また、X線光電子分光によるルチルおよびアナターゼ表面のガス反応性のリアルタイム測定も引き続き行う。
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