研究領域 | 機能コアの材料科学 |
研究課題/領域番号 |
19H05793
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
平山 雅章 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (30531165)
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研究分担者 |
森 大輔 三重大学, 工学研究科, 准教授 (00432021)
鈴木 耕太 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (40708492)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | イオン導電体 / 電気化学界面制御 / 全固体電池 / リチウムイオン電池 |
研究実績の概要 |
本研究では,機能コアの開発による高機能固体イオニクス材料の創出を目的とし,【1】粒界・界面の合成および評価手法構築,【2】機能コアによるイオニクス材料の機能開拓,【3】高機能固体イオニクス材料の設計手法開発,を進めている.【1】基本物質であるLi10GeP2S12固体電解質を対象とし,結晶粒界に異なる元素種の導入,空隙位置に他物質を充填する合成手法を開拓し,初年度に構築した大気非暴露下FESEMおよびSPM観察から粒界・界面の組成構造を制御できることを確認した.【2】得られた試料の電気化学特性評価から,粒界・界面制御で硫化物電解質の大気安定性や,電極電解質界面における充放電反応の可逆性が向上することを実証した. さらに【1】では,リチウム電池正極/固体電解質界面を薄膜モデル系で構築し,表面X線散乱法,硬X線光電子分光で反応場のその場観測に成功した.反応時に正極表面が固液界面とは異なる結晶構造に変化し,リチウム脱挿入時の電荷補償やサイクル可逆性に影響することを明らかにした.【2】については,基本となる物質開拓を進めており,導電性に優れるリチウムイオン導電体およびヒドリドイオン導電体を見いだした.【3】については,イオニクス材料開発の高効率化するために,理論計算・情報科学の導入を推進している.理論計算・情報科学班との連携を開始し,バルク物質探索では既に新規材料を見いだした.今後,機能コア材料設計を見据えた取得データや処理手法を検討していく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画班では機能コアの概念をエネルギー変換・貯蔵を担う固体イオニクス材料に導入し,高機能材料を創出する役割を担い,以下の3項目の達成を目指している.【1】粒界・界面の合成および評価手法構築,【2】機能コアによるイオニクス材料の機能開拓,【3】高機能固体イオニクス材料の設計手法開発.令和2年度は初年度に構築した【1】および【2】が固体イオニクス材料開発に有効であることを材料特性の実測から明らかにすることを当初計画とした.「研究実績の概要」のとおり,粒界・界面構造の制御と実測を可能とし,イオン導電性や全固体電池充放電特性を向上できることを実証できた.理論計算・情報科学を活用した物質開拓にも成果があり,物質内部から材料粒界・界面にわたる総合的な固体イオニクス材料開発が可能になってきた.一方,機能コアを特定するためには,放射光実験,中性子実験など高度解析を要するが,新型コロナウィルスによる外部出張制約などにより,十分な検討をすることができなかった.材料合成は研究室内で進めることができ,材料開発と反応解析のエフォートを適宜調整することで,全体進捗には問題なく,研究機関内で計画通りに成果が得られると考えている.以上より,「おおむね順調に進展している」.
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度までに構築したイオニクス材料の組成,結晶構造および微細構造を制御する合成技術,構造解析手法を活用して,様々な固体イオニクス材料を継続的に生み出すことが最大のミッションとして推し進める.並行して,材料ナノ構造とイオン導電性や電気化学反応性,機械特性を整理・考察をしていくことで,固体イオニクス材料における機能コアの概念確立を目指す.さらに,材料開発の効率化を見据えて,計算科学的手法を活用したデータ解析および探索手法を模索していく.
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