研究領域 | 情報物理学でひもとく生命の秩序と設計原理 |
研究課題/領域番号 |
19H05798
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究 |
研究代表者 |
青木 一洋 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 教授 (80511427)
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研究分担者 |
松岡 里実 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (00569733)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | EGF / EGFR / ERK / 情報量 / 1分子イメージング / FRET |
研究実績の概要 |
本研究のテーマは真核生物の細胞内情報伝達系の情報処理特性である。真核生物の細胞内情報伝達系について、情報伝達分子や反応のネットワークの全体像が明らかになりつつある。一方で、既存の研究のフレームワークでは理解できない細胞内情報伝達系の問題も数多く残されており、情報・通信の分野で研究されてきた情報理論を用いたアプローチによる解決が期待されてきた。しかし、従来の情報理論からの帰結と細胞・分子生物学の知見との間にはいまだに大きなギャップが存在しており、生物学者の直観とは乖離していることが多い。本研究では、分子から細胞にわたる情報処理特性を情報という視点から解析することで、既存の生物学にはない情報量という物理量を定量化する。このような独自のアプローチにより、情報伝達系の設計原理を明らかにする。 本年度は、(1)リガンド-受容体-細胞内情報伝達系における情報の流れの特徴化と定量化と、(2)多様なリガンドの細胞内情報伝達系による符号化原理、の2つのテーマに関しては解析を進めた。(1)に関しては、リガンドとしてEGF、受容体としてEGFRの間に流れる情報量の定量化を1分子イメージングで行うための実験系の構築を行った。内在性EGFRを発現しないCHO細胞に、薬剤誘導的にEGFR-HaloTagを発現する細胞株を樹立した。さらに、ERKのFRETバイオセンサーを発現する株を樹立し、EGF刺激によるERKへの情報量の伝達を定量化した。(2)に関しては、GPCRの下流シグナルであるcAMP, Ca, ERK, RhoAの時系列を効率よく定量化する実験系を樹立した。現在、40種類ものGPCRをリガンド刺激したときの下流シグナルを定量化し、解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)リガンド-受容体-細胞内情報伝達系における情報の流れの特徴化と定量化と、(2)多様なリガンドの細胞内情報伝達系による符号化原理、の2つのテーマを本年度は進めたが、いずれも予定通り進捗している。また同じ伊藤創祐さんとの共同研究も順調に進んでいる。これらの結果を鑑み、本年度はおおむね順調に進展したと結論した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は引き続き、(1)リガンド-受容体-細胞内情報伝達系における情報の流れの特徴化と定量化と、(2)多様なリガンドの細胞内情報伝達系による符号化原理、の2つのテーマを中心に進める。(1)に関しては、分担研究者の松岡が1分子イメージングの顕微鏡系を構築中であり、来年度中に画像の取得と定量化を行う。(2)に関しては、GPCRの下流の時系列情報から、細胞がどれくらいのリガンドの種類や濃度といった情報を取得できているのかを情報量により見積もることを検討する。
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