ニュートリノレス二重ベータ崩壊探索では、世界に先駆けてニュートリノ質量の逆階層領域に到達し、複数の理論予測にもかかる新たな節目に到達しており目標は達成済みである。更なる大幅な感度向上にはエネルギー分解能の改善が不可欠であり、光量5倍を目標とするカムランド2計画を推進してきた。カムランド2計画は日本学術会議の未来の学術構想(2023)に掲載(No.178)されるとともに、文部科学省の学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想(ロードマップ2023)に選定された。これを受けてカムランド2に向けた準備としてカムランド禅800実験を2024年1月に停止し、キセノンの取り出しを開始した。それまでに蓄積したデータによって半減期にしておよそ50%の感度向上が得られている。カムランド2での二重ベータ崩壊研究では逆階層領域をカバーする感度を目標としている。また、地球ニュートリノ観測においても、観測精度向上の実現とともに目標を上回る成果として地球モデルの選別を始めることに成功しており、地球内部のダイナミクスやそれに関係する地球内部組成に対して新たな知見を得る質的変革をもたらした。地球ニュートリノ研究をさらに強力に発展させる計画も未来の学術構想(2023)に掲載(No.106)された。マルチメッセンジャー天文学の一角をなす天体ニュートリノ研究においては、カムランドが近傍超新星爆発に対して数日前からアラームを発出する体制を整えていたところであるが、スーパーカミオカンデがガドリニウムを添加したことで、爆発の数時間前からの感度を高めており、これを受けて、より信頼性の高いアラームを生成できるように、スーパーカミオカンデとの合同観測体制を構築した。一方が停止していても最低限のアラームを発出できる体制が整った。
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