研究領域 | 地下から解き明かす宇宙の歴史と物質の進化 |
研究課題/領域番号 |
19H05808
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
南野 彰宏 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70511674)
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研究分担者 |
田中 雅士 早稲田大学, 理工学術院, 准教授(任期付) (30545497)
池田 一得 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (90583477)
竹田 敦 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (40401286)
岩田 圭弘 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 福島研究開発拠 点 廃炉環境国際共同研究センター, 研究職 (20568191)
伊藤 主税 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 高速炉・新型炉研究開発部門 大洗研究所 高速炉サイクル研究開発センター 燃料材料開発部, 課長 (90421768)
市村 晃一 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 助教 (80600064)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 極低放射能技術 / 高純度ゲルマニウム検出器 / レーザー共鳴イオン化 / 希ガス微量分析 / 環境中性子 / 高感度ラドン検出器 / 地下宇宙素粒子実験 |
研究実績の概要 |
本研究計画の目的は、地下低放射能実験の世界のトップランナーが集まる本領域において、各実験グループがもつ低放射能技術を共通基盤化し、各グループに還元することである。2020年度は次の5つを進めた。 (1) 検出器材料中のRI: C01 班がSK-Gdで用いる硫酸ガドリニウム中の極微量ラジウムをゲルマニウム検出器で測定する手法を開発し、論文として出版した。また、神岡地下にある既存の Ge 検出器を用いて SK-Gd 計画に用いる硫酸ガドリニウムを中心に検出器材料のスクリーニングを行い、各研究計画班に結果を提供した。さらに、本研究で開発した極低バックグラウンド仕様のゲルマニウム検出器が 神岡地下 Lab-C に納品され、試運転を行った。 (2) 水やキセノンガス中の希ガス RI:リアルタイムで硫酸ガドリニウム水中のラドン濃度測定ができるラドン検出器を開発し、バックグラウンドレベルを1 mBq/m3 以下におさえることに成功した。また、既存の水ラドン検出器を B01班が推進している XENONnT実験に移設し、動作試験を完了させた。更に、高感度ラドン検出器の濃縮作業を自動化するための準備を進めた。レーザー共鳴イオン化を用いたキセノンガス中の希ガス微量分析は、空気中のクリプトンの共鳴イオン化信号観測に成功した。 (3) 地下環境中性子: ヘリウム3比例計数管2台で、神岡地下実験施設での長期測定を継続して行った。さらに、液体シンチレーター検出器のアルファ線バックグラウンドを従来の1/4 程度まで減らすことに成功した。 (4) Gd3+発光: Gd3+発光の測定に向けたセットアップを構築している。 (5) 成果発信: 低放射能技術に関する研究会を2度開催した。また、先行の新学術領域研究「地下素核」で 開発された放射能データベースを引き継ぎ、改良を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 納入が遅れていたスクリーニングシステムに用いる新型ゲルマニウム検出器が納入され、試運転を進めた。また、既存のゲルマニウム検出器を用いた測定は順調に進展した。 (2) 硫酸ガドリニウム水中のラドン測定のための3種の水ラドン検出器の開発および測定は順調に進展した。レーザー共鳴イオン化を用いたキセノンガ ス中の希ガス微量分析にむけた動作確認は順調に進展した。 (3) 低バックグラウンド中性子検出器の開発は順調に進展した。また地下実験施設における環境中性子フラックスの長期測定を進めた。 (4) Gd3+発光の測定に向けたセットアップの構築を進めた。 (5) 放射能データベースの準備は順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 検出器材料中の RI: 新型ゲルマニウム検出器の遮蔽体の準備を進め、世界最高感度である 背景事象の連続成分がO(10) counts/day/kgでの運用開始を目指す。さらに、既存のゲルマニウム検出器と一緒に SK-Gd で用いる硫酸ガドリニウムを中心に検出器材料のスクリーニングを進める。 (2) 水やキセノンガス中の希ガス RI: リアルタイムラドン検出器をSK-Gd に投入し、運用を開始する。並行して、リアルタイムラドン検出器の膜脱気モジュール構成パーツのスクリーニングを行い、低バックグラウンド化を進める。またSK-Gdでの運用開始に向けて高感度ラドン検出器の濃縮作業の自動化を進める。レーザー共鳴イオン化を用いたキセノンガス中の希ガス分析は、アルゴンやキセノンなどのサンプルガス中のクリプトンの共鳴イオン化信号を測定後、キセノンガス中のクリプトンをO(10) ppq レベルの感度で測定する。 (3) 地下環境中性子: ヘリウム3比例計数管と液体シンチレーター検出器を用いて神岡地下実験施設で環境中性子の長期測定を行う。また、公募研究「落雷磁場を利用した神岡地下水分量の長期測定」と連携しながら、地下環境中性子の系統的な理解を進める。さらに、液体シンチレーター検出器のアルファ線バックグラウンドを、ゲルマニウム検出器とアルファ線イメージ分析装置によるスクリーニングにより更に1/10 程度低減する。このバックグランドの低減後、液体シンチレータ検出器を量産し、ヘリウ ム3 比例計数管と共に地下実験室の多地点同時観測を行う。 (4) Gd3+発光: Gd3+発光の発光寿命と波長スペクトラムの測定を実現し、結果をSK-Gdに提供する。 (5) 成果発信: 低放射能技術に関する研究会を引き続き開催する。また。放射能データベースを本領域 メンバー以外にも公開する。
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