研究領域 | 地下から解き明かす宇宙の歴史と物質の進化 |
研究課題/領域番号 |
19H05809
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉田 斉 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (60400230)
|
研究分担者 |
石徹白 晃治 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 准教授 (20634504)
岸本 康宏 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 教授 (30374911)
美馬 覚 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 研究員 (50721578)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
|
キーワード | 極低温検出器 / ニュートリノ / 暗黒物質探索 / アクシオン / 超伝導検出器 |
研究実績の概要 |
本研究計画は、以下の点について研究を進めている。1) 地下実験室のクリーンルーム内に、極低バックグラウンド(BG)仕様無冷媒希釈冷凍機を整備する。2) 0νββ崩壊探索・暗黒物質探索検出器の高感度化技術として、多様な高性能温度センサー(半導体NTDセンサー,および超伝導MMC, TES, KIDセンサー)を利用した蛍光熱量計を開発する。3)冷却強磁場・高周波測定環境を構築し、強磁場超伝導空胴を利用したアクシオン探索手法の確立を行う。 2019年度は、無冷媒希釈冷凍機を極低BG化するための準備研究を開始した。CsI(Tl)検出器を希釈冷凍機MixingChamber直下に設置して放射線測定を行い、BG源の調査測定を行った。この調査結果をもとに外部からの放射線BG低減のためのシールド設計を完了した。併せて、遮蔽構造が200kg程度になることから、強度の補強についても希釈冷凍機メーカーと協議を行い、設計を完了した。 地上実験室にて、超伝導センサー(MMC)とCaF2シンチレーション結晶を使用して蛍光熱量計開発を行った。238U系列の娘核である、222Rn→218Po→214Pbの半減期3分の連続α崩壊信号を使用して、事象信号の検出器内場所依存性を取り除くことで、エネルギー分解能0.2%(エネルギー4.3MeV換算)を実現することに成功した。 シリコン基板に電磁場解析ソフトを使用して設計したKIDセンサーを実装した。エネルギー閾値を調査するためには、新たに信号増幅用のアンプが必要であると分析された。 無冷媒式の超伝導マグネットを整備し、強磁場(9T)下での共振空胴試験環境を実現した。超高純度銅製共振空胴を設計・製作し、RF特性評価を行った。来年度予定していた周波数変調超伝導空胴製作の準備を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響で、2020年2月末に予定していた、韓国標準科学院との共同研究の測定実験が延期となった。当該計画をっ繰越すこととしたが、2020年度についても状況改善が見込めないため、現地での実験装置組み立て、測定を断念し、国内での測定環境整備を行い実施を目指すこととなった。シリコン基板上に実装したKIDセンサーからの信号を分析したところ、十分な信号強度を得るためには、新たに信号増幅用のアンプが必要であると分析された。また、エネルギー閾値の測定のためには、低エネルギーX線源の強度が不足していることがわかり、冷凍機内で使用できる線源の入手が必要となった。 来年度予定していた周波数変調超伝導空胴製作のための打ち合わせを開始したところ、超伝導線材として利用を検討していたNbTiの入手に困難が予測されることが判明した。加速器空洞の製作などに使用している在庫について調査をすることになった。
|
今後の研究の推進方策 |
無冷媒希釈冷凍機に、設計が完了した低放射能放射線シールドを導入し、冷凍機の低BG化を実施する。遮蔽体導入前に測定した環境放射線バックグラウンドを遮蔽体導入後にも測定し、導入によるバックグラウンド低減を定量的に評価する。振動センサーやガウスメーターなどを使用したた信号ノイズの測定・解析により、必要があれば磁気シールド、除振装置の設計も進める。放射性不純物の多い材料や新たに導入する部品の低BG素材選定を、計画研究D01と協働で進めることで領域内の連携を進める。 NTDセンサーやMMC、KIDセンサーを使用して蛍光熱量計開発を引き続き推進する。MMCセンサーとCaF2検出器の組み合わせに加えて、吸収体として他の結晶を利用し吸収体の多様化を進める。シリコン基板の両面にKIDセンサーを実装し、多次元的に信号を読み出すことで位置情報の取得など新しい超伝導検出器機能の開発を開始する。また基盤としてCaF2結晶などの無機蛍光検出器にKIDセンサーを実装しエネルギーしきい値の低減や、暗黒物質探索への応用に向けた基礎研究を発展させる。 2019年度に導入した超伝導マグネットを使用し、超高純度銅製の共振空胴と超伝導体ニオブチタン(NbTi)製の空胴を用いて、強磁場下でのRF特性評価を引き続き進める。NbTi空胴に対する磁場応答とマイクロ波応答については、個別の先行研究があるので、その追試を行うとともに、「磁場中」で「マイクロ波」を同時に扱う革新的技術の確立を目指す。高周波技術や磁場制御技術については、超伝導センサー開発と協力し、技術的連携を行って研究を加速させる。
|