研究領域 | 蓄電固体デバイスの創成に向けた界面イオンダイナミクスの科学 |
研究課題/領域番号 |
19H05813
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
入山 恭寿 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (30335195)
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研究分担者 |
田中 優実 東京理科大学, 工学部工業化学科, 准教授 (00436619)
獨古 薫 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (70438117)
松井 雅樹 北海道大学, 理学研究院, 教授 (70639210)
大西 剛 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, グループリーダー (80345230)
太子 敏則 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (90397307)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 界面 / 薄膜 / 単結晶 / 全固体電池 |
研究実績の概要 |
A01はモデル界面を担当し、1.モデル基盤材料の合成 2.イオン輸送モデル界面の構築とその高速化 3.イオン蓄積モデル界面の構築とその高濃度化の三つの研究項目に取り組んでいる。本年度はイオン輸送モデル界面の構築とその高速化、およびイオン蓄積モデル界面の構築とその評価を中心に行った。 イオン輸送モデル界面については、R3年度に引き続きA02の多様な高度計測装置に適した膜厚・サイズの標準電池を作製し提供している。電極/コート層界面において電圧印加した際のコート層の変質をXPSでその場計測できる新たなモデルセルを開発した。界面の化学因子の抑制には低温材料合成が有用であり、LCO低温合成手法を各種層状正極活物質に展開するパラーメータを調査した。電極/有機電解液界面においては、界面抵抗に及ぼす因子として有機電解液内のリチウムイオン活量および有機分子の縦緩和時間が支配因子となることを明らかにした。負極側では気相法で固体電解質上にSi薄膜を作製し、大電流での短絡を抑制するための固体電解質の前処理手法を開発した。 イオン蓄積モデル界面については、R3年度と同様にLixLa(1-x)/3NbO3 (LLNbO)などの単結晶基板を合成し、A02及び他の連携機関へ試料提供を行うことで電荷蓄積現象の解明に向けた研究を進めている。LATP単結晶については、電子顕微鏡を用いた微構造観察とイオン伝導率評価に向けた連携を開始した。固体電解質(LLN、LATP)と金属電極(Pt、Au、Cu)から成るモデル対称セルについて、TSDC法に基づく電荷蓄積の計測・緩和挙動の解析を進めた。 以上の成果に関して、A01では学術論文が18件、学会発表が49件(うち招待・基調講演が14件、国際学会が7件)、図書2件、特許3件(取得)の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イオン輸送界面においては、標準電池やハーフセルなどA02の高度計測に適したモデルセルを提供し、その連携成果が着実に得られている。電極/コート層界面では電圧を印加する際に生じる組成変化と電位窓との相関が得られ、高耐久なコート層材料を開発するための基礎的指針を得た。低温電極合成については液相形成と水の含有に加えて、酸化状態の制御が結晶成長に大きく影響することを見出した。電極/有機電解液界面については界面抵抗に及ぼす因子(リチウムイオン活量および有機分子の縦緩和時間)を継続して解析するとともに、界面の低抵抗に向けた有機系電解質の分子設計とその合成を行っている。負極側においては100 nmの厚みのSi薄膜で容量低下がほぼない2Cサイクル特性と100Cまでの放電特性を達成し、更に厚膜化した際の特性改善に向けた研究をすすめている。 イオン蓄積界面においてはLLNbOおよびLATPのモデル対象セルにおいて、電池作動環境に近い直流電界処理によって複数の分極状態が形成されること、この中に、電極種や電極製膜条件の影響を大きく受ける分極状態が含まれていることを見出した。 モデル基盤材料合成に関しては当初予定より遅れている部分もあるが、引き続きLLNbO単結晶を各機関に提供するとともに、LATPの結晶育成に関しては融液への真空脱泡等の新たな条件により5mm程度の単結晶育成が可能になった。 以上、A01ではイオン輸送界面の高速化における成果が連携研究を活用し着実に得られつつある。研究項目による濃淡はあるが、総合的には概ね順調に研究が進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1.イオン輸送モデル界面:第一世代標準電池の提供と第二世代標準電池の開発(担当:入山、大西、太子)についてはR3年度に引き続き、多結晶LATP電解質を用いた第一世代標準電池とそれを改良した各種電池を作製し、A02との連携による多角解析を進める。第二世代標準電池の開発に向けて、その母材となる単結晶固体電解質の解析をA02と連携してすすめる。薄膜電極-コート層のモデル界面構築によるイオン輸送特性支配因子の抽出(担当:入山)については定常状態解析を調べる電池としてコート層を備えた硫化物型モデル薄膜電池に注力し、解析に必要な実験データを入山Grが取得しA03と連携して反応機構解析を行う。また、原子層レベルで厚み制御されたコート層を作製し、全界面抵抗における空間電荷層の影響を解明する研究に取り組む。低抵抗ヘテロ界面構築手法の開発(担当:松井、獨古、大西)において、松井Grは合成時の雰囲気に加湿を加えることでターゲットとする物質の組成と合成条件の最適化を実施する。LLTO上にLCOを形成し、その他の手法で得た固固界面でのイオン移動の挙動との比較解析を実施する。獨古Grは有機系電解質/リチウムインターカレーション材料薄膜電極および有機系電解質/無機固体電解質のモデル界面における界面抵抗の支配因子を定量評価し、有機系電解質/無機固体の低抵抗界面の設計指針を確立する。大西Grは固体電解質上で厚さ1ミクロンm以上の厚みで安定な充放電を可能とする界面構築を目指す。 2.イオン蓄積モデル界面:イオン蓄積モデル界面の構築と高濃度化(担当:田中、太子、入山)については単結晶LLNbOや多結晶LATP電解質を用いた熱刺激電流法解析により、分極・緩和の繰り返しで様々な未同定ピークが出現することがわかってきた。R4年度はこれら未同定ピークの起源解明に向けた研究をA02、A3との連携で進める。
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