研究領域 | ハイパーマテリアル:補空間が創る新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
19H05818
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
田村 隆治 東京理科大学, 先進工学部マテリアル創成工学科, 教授 (50307708)
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研究分担者 |
木村 薫 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30169924)
室 裕司 富山県立大学, 工学部, 准教授 (50385530)
山田 庸公 東京理科大学, 理学部第一部応用物理学科, 助教 (60638584)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 準結晶 / 局在磁性 / 強相関系 / 半導体 / 酸化物 |
研究実績の概要 |
局在ハイパーマテリアルに関しては、Au系をはじめとする様々な合金系で1/1近似結晶および2/1近似結晶の単相試料を作製し、磁化測定によりワイス温度・磁気秩序を詳しく調べた。その結果、近似結晶の磁性が、個々の合金系によらず、平均価電子数のみに依存するというユニバーサルな振舞いを示すことを発見し、平均価電子数に対する磁気相図を得ることに成功した。次いで、この磁気相図を準結晶に適用し、強磁性領域において液体急冷単ロール法により準安定準結晶の探索を行った。その結果、Au-Ga-R(R=Gd,Tb)系において準結晶の合成に成功した。その磁化および比熱測定を行ったところ、強磁性転移が観測され、準結晶初の強磁性秩序を示唆する結果が得られた。またこの結果は、近似結晶で得られた磁気相図が準結晶に対しても適用可能であることを示すものである。 酸化物ハイパーマテリアルに関しては、構造モデルの構築に取り組んだ。第一原理計算で報告されたチタン酸バリウム(Ti-O-Ba)近似結晶の構造に基づき、準結晶の4次元構造モデルを作成した。半導体ハイパーマテリアルに関しては、Al-Pd-Ru 2/1近似結晶のバンド計算を行い、バンドギャップの有無を確かめ、半導体化するための置換元素を明らかにし、実験で確かめた。さらに、新規近似結晶Au-Si-R(R=Ce,Pr)を開発し、新たな強相関電子ハイパーマテリアルであることを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
準結晶における長距離磁気秩序の実現に向けた1/1および2/1近似結晶の磁気相図が完成した。この磁気相図を用いて準結晶を探索したところ、Au-Ga-R(R=Gd,Tb)系において準結晶の合成に成功し、その磁化・比熱曲線において強磁性転移を示唆する結果が得られた。このように準結晶における磁気秩序実現の可能性がにわかに高まっている。 酸化物ハイパーマテリアルに関しては、準結晶の構造に対して補空間フェイゾン歪を導入することで様々な近似度をもつ酸化物近似結晶のモデルを導くことに成功した。 半導体ハイパーマテリアルに関しては、Al-Pd-Ru 2/1近似結晶での計算でバンドギャップが実現し、熱電物性の実験から準結晶・近似結晶共に、電子ドープによって半導体化することが分かった。しかし、AlのSi置換の実験では、より金属化してしまった。 新しい強相関電子系ハイパーマテリアルの開発は順調に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
準結晶のマクロ磁化測定で観測された強磁性転移の実証には、中性子回折実験による検証が不可欠であり、今後中性子回折実験を実施する予定である。 酸化物ハイパーマテリアルに関しては、ペロブスカイト型構造をとる酸化物のうち、セリウム酸バリウムが原子間距離などの構造的特徴がチタン酸バリウムともっとも類似性が高い。A01公募班と連携して、この系において酸化物ハイパーマテリアルを探索する。 半導体ハイパーマテリアルに関しては、まずは新たな準結晶・近似結晶の予測のため、A03班に準結晶・近似結晶の組成と相図のデータを提供し、予測に基づいて実験的探索を行う。 強相関系ハイパーマテリアルに関しては、Pr系ハイパーマテリアルはほとんど未開拓なので、Au-Si-Prの開発を起点にさらに開発を進める。
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