計画研究
局在ハイパーマテリアルに関しては、前年度に得られた強磁性準結晶の熱的安定化もしくは良質化を目的として、異種元素の添加もしくは元素の置換により新規準結晶試料の作製を行った。その結果、Au-Ga-Dy系において、液体急冷法により単相の準安定強磁性準結晶の合成に成功した。加えて、得られた準結晶は広い単相域を有することも判明した。そこで、組成の異なる強磁性準結晶の磁化測定を行い、ワイス温度の平均価電子数依存性をくわしく調べた。その結果、ワイス温度の振舞い、特にピークをとる平均価電子数が近似結晶のそれとよく整合していることが判明し、近似結晶で作成した磁気相図が準結晶において有効であること、準結晶の磁性の予言性を有していることが示唆される結果を得た。この結果は、強磁性だけでなく、様々な磁気秩序をもった準結晶の開発の基礎となる結果である。酸化物ハイパーマテリアルに関しては、A01班で収集した440の粉末X線回折図形データについて、昨年度作成した機械学習モデルによるスクリーニングを行い、その結果、新たな20面体準結晶を見出した。半導体ハイパーマテリアルに関しては、半導体ハイパーマテリアルの合成と熱電素子への応用を目指して、Al-Si-Ru系準結晶の単相試料作製と熱電物性測定を行った。半導体近似結晶の合成に成功したAl-Ru-Si系で、機械学習により新たに見つかった準結晶が半導体かどうか実験で調べた。強相関ハイパーマテリアルに関しては、2元系近似結晶Cd6Gd,Cd6Tbの超音波物性測定によって、新たな磁気秩序相を発見した。
2: おおむね順調に進展している
前年度の強磁性準結晶の合成に引き続き、今年度はその単相化に成功した。さらに、準結晶の磁性の組成依存性の測定を行い、近似結晶の磁気相図が準結晶へ適用可能であるとの知見が得られた。これは今後反強磁性準結晶の実現に向けた大きな一里塚である。酸化物ハイパーマテリアルに関しては、粉末回折図形データから機械学習により初めて準結晶を発見することができた。アルゴリズムの改良を施すことでさらなる高性能化を図る。Al-Si-Ru系準結晶の単相試料の熱電物性を測定した結果、温度上昇に伴って弱く増加する電気伝導率と高々30μV/K程度の小さいゼーベック係数を示し、半導体ではないことが分かった。半導体ハイパーマテリアルに関しては、Al-Ru-Si系準結晶の単相試料を合成し、熱電物性を調べたところ、半導体では無く、金属であることが判明した。強相関電子系ハイパーマテリアルに関しては、共同研究を進め、新たな知見を得ることができた。
準結晶における反強磁性秩序の実現に向けて、近似結晶の磁気相図をもとに探索を行う予定である。あわせて、強磁性準結晶のさらなる熱的安定化を図り、液体急冷プロセスが不要な強磁性準結晶の実現を狙う。酸化物ハイパーマテリアルに関しては、準結晶と高次近似結晶の回折図形は類似しているため、現在の機械学習モデルでは正確に区別ができておらず、その原因は人工的に作成した訓練データにあることが判明している。今後、データ生成方法を改良し、予測性能の高性能化を図る。縮退半導体的な物性を示すAl-Pd-ReとAl-Pd-Ruをベースに、元素置換を施すことで半導体準結晶の創製を目指す。半導体ハイパーマテリアルに関しては、半導体準結晶・近似結晶の予測のため、A03班に電気抵抗率と熱伝導率のデータを提供し、予測されたものを実験で確かめる。強相関ハイパーマテリアルに関しては、超音波による共同研究をPr系にも適用し、Au-Ge-Prの新奇物性解明を進めていく。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (93件) (うち国際学会 17件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
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