計画研究
新たに開発したSQUIDに導入可能な対向アンビル型高圧発生装置を用いて、交代磁性体候補物質MnTeにおけるピエゾ磁気効果を調べた。応力に対して線形に発達する磁化を観測し、ピエゾ磁気効果テンソルの大きさを正確に評価することに成功した。磁気八極子に起因するピエゾ磁気効果テンソルはQ = 1.38×10-8 μB/Mn/MPa であり、これは典型的なピエゾ磁気効果物質MnF2で観測された値と同等であることが分かった。また、応力磁場冷却の条件を変えてピエゾ磁気効果の大きさを評価することで、ピエゾ磁気効果により反強磁性体におけるドメイン構造を制御できることを実証した。この成果は、将来のスピン分解ARPESによる交代磁性体のスピン分裂を観測するための基盤を築いたものと位置付けられる。さらに、MnTeの反強磁性相において、M=1.0×10-6 μB/Mnの弱強磁性を観測した。この結果より、反強磁性スピンの配列方向を決定することに成功した。上記に加えて、様々な量子液晶物質の開発に取り組んだ。具体的な実績として、フラックス法によるTc =130 Kの銅酸化物超伝導体(Hg,Re)Ba2Ca2Cu3O8+deltaの純良単結晶育成、金属間化合物Zr6FeTe2における超伝導(Tc = 0.76 K)の発見、ノーダルライン半金属CaAgPの表面状態における非従来型超伝導の発見、蜂の巣格子系Ru(Br1-xIx)3における金属絶縁体転移の微視的機構の解明、フェロアキシャル秩序系NiTiO3における電場誘起磁気キラル二色性の実証、電気伝導を示すフェロトロイダル秩序系NdB4における第二高調波発生を用いたドメインの観測、Aサイト秩序型ペロブスカイト型酸化物SmBaFe2O6のトポケミカル反応による合成と電荷不均化現象の観測が挙げられる。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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