研究領域 | 量子液晶の物性科学 |
研究課題/領域番号 |
19H05825
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
紺谷 浩 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (90272533)
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研究分担者 |
求 幸年 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40323274)
遠山 貴巳 東京理科大学, 理学部第一部応用物理学科, 教授 (70237056)
SHANNON Nic 沖縄科学技術大学院大学, 量子理論ユニット, 教授 (70751585)
有田 亮太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (80332592)
池田 浩章 立命館大学, 理工学部, 教授 (90311737)
佐藤 正寛 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (90425570)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 量子液晶 / 電荷液晶 / スピン液晶 / 電子対液晶 |
研究実績の概要 |
強相関電子系において普遍的に観測される、ナノからメゾスケールの自己組織化を伴う量子液晶状態に対する理論研究を推進し、以下の研究実績をあげた。 電荷液晶に関する研究実績では、鉄系超伝導体および銅酸化物超伝導体における、新種の電荷ネマティック秩序やスメクティック秩序を理論的に予言し、実験班による実験報告に対する理論的説明を与えた。遷移金属ダイカルコゲナイドにおける非整合電荷秩序の微視的起源を説明した。また、新規強相関超伝導体であるニッケル酸化物超伝導体の理論研究を実施し、この系の多体電子状態および超伝導発現機構を、第一原理的手法に基づき明らかにした。更に、動的密度行列繰り込み群法などの最先端の理論手法を駆使して、量子液晶の非平衡現象やダイナミクスの理論を構築した。 さらに第一原理的手法を駆使して、超高圧下の高温超伝導体LaH10の理論研究を推進した。その結果、この系の新奇な圧力誘起量子液体状態が明らかになり、この系の高温超伝導発現機構に関する重要な知見を得ることが出来た。 スピン液晶に関する研究実績では、モアレスピン超格子の概念を導入し、各種スピン液晶に対する包括的議論を行った。並行して、様々な大規模数値解析手法を糾合して各種スピン系を詳細に調べ、その基底状態や励起状態、創発的電磁現象を明らかにした。またキタエフスピン系など代表的な量子スピン系におけるスピン液体状態や励起状態、各種輸送現象の理論研究を行い、実験班との協力により重要な成果を上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子液晶現象が発現する代表的物質であり、世界的に研究が進展している鉄系超伝導体や銅酸化物高温超伝導体(電荷液晶)、フラストレート量子スピン系やキタエフスピン系(スピン液晶)の理論研究において、重要な研究の進展が得られた。例えば、鉄検超伝導体におけるスメクティック秩序の理論を新たに提唱し、実験班による実験報告の理解を可能にした。また量子スピン系における熱伝導など各種輸送現象について、実験班と協力して研究を推進し、著しい進展が得られた。 加えて、量子液晶状態の数値的計算手法に関して、重要な進歩があった。例えば、電荷液晶の秩序パラメーターを「構造因子」として一般化し、汎関数繰り込み群理論や密度波方程式理論に基づいて構造因子の最適化を行うことで、量子液晶秩序をバイアスなく決定する手法が開発された。また、モアレスピン超格子の概念を導入することで、スピン液晶の多様性や創発的電磁現象に関する包括的な研究が可能になった。更に、第一原理計算手法に基づく量子液晶物質の物質設計の理論においても、大きな進展があった。今回開発された理論計算手法を、様々な量子液晶物質に適用することにより、重要な研究成果が見込まれる。 上記の理由より、現在までの研究の進捗状況は、大変順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は以下の通りである。 〇電子液晶の研究: 本班で発展させてきた汎関数繰り込み群理論や密度波方程式、動的平均場理論といった最先端の量子多体理論に基づき、様々な強相関金属を網羅的に解析し、新しい電荷液晶秩序を予言する。また群論に基づく現象理論を発展させ、電子液晶における新種の電気磁気効果や非線形現象、非相反現象を解明する。 〇スピン液晶の研究: 本班で発展させてきたマヨラナ平均場近似法や量子モンテカルロ法などの理論的手法を活用し、キタエフスピン系をはじめとする様々な量子スピン液体系におけるスピン液晶秩序の研究を推進する。加えて多項式展開ランジュバン法などの計算手法を用いて、磁気スキルミオンなど磁気テクスチャや量子輸送現象の研究を行う。 〇量子液晶の非平衡現象: 動的密度行列繰り込み群法などの大規模数値計算を推進し、量子液晶における動的性質を研究する。また、スピン流揺らぎやレーザー駆動高次高調波の解析を推進する。 〇非従来型超伝導の発現機構の研究: 超高圧下の高温超伝導体LaH10やニッケル酸化物超伝導体、STO基板上のFeSeなどの非従来型の高温超伝導の発現機構を解明する。量子液晶の揺らぎが媒介する新規引力機構を考慮して、従来のMigdal-Eliashberg理論を超えた多体効果(バーテックス補正)を考慮した超伝導理論を構築する。 〇量子液晶の総合的研究: これまで本班で培ってきた、電荷液晶、スピン液晶、電子対液晶に関する理論的知見を糾合し、量子液晶の統一的理論の構築を目指した総合的研究を推進する。
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