本研究課題では、始原生殖細胞が胚発生過程で分化運命の決定を受けるメカニズムを解明するために、まずこれまでに同定した始原生殖細胞分化決定遺伝子候補の機能および作用機構を、遺伝子改変マウスの解析により明らかにする。今年度は2種類の候補遺伝子にノックアウトマウスを作成し、ホモ変異胚でいずれの遺伝子についても、発生の異常を確認した。このうち一つの遺伝子については、始原生殖細胞数の顕著な減少が起こっていることが明らかになった。また前駆細胞の時期から始原生殖細胞で特異性のある発現を示すmill/fragilis遺伝子について、今年度はその発現制御領域のDNAの脱メチル化が、始原生殖細胞形成期に開始することを見いだした。さらにES細胞から始原生殖細胞が分化する培養系にsiRNAライブラリーを導入して同定した、始原生殖細胞の分化運命決定に係わる5種類の遺伝子候補について、それらsiRNAをES細胞に作用させると、複数の生殖細胞特異的な遺伝子発現が誘導されることを明らかにした。一方、マウス成体肝臓細胞および胎児線維芽細胞から樹立したiPS細胞のin vitro分化から、Oct4/Mvh発現陽性の生殖細胞を培養株化し、その分化特性を解析した。また、RanBPM遺伝子KOマウスの精子形成不全には精子幹細胞の減退が付随することが判明した。
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