研究領域 | 生殖系列の世代サイクルとエピゲノムネットワーク |
研究課題/領域番号 |
20062003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 智 東京大学, 大学院・農学生命科学研究所, 准教授 (90242164)
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研究分担者 |
大鐘 潤 明治大学, 農学部, 講師 (50313078)
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キーワード | DNAメチル化 / マウス / 初期胚 / 内部細胞塊 / 栄養外胚葉 / 幹細胞 |
研究概要 |
これまでの研究により、ヒトとマウスに共通して栄養膜細胞系列・胚体細胞系列間でDNAメチル化状態の異なるゲノム領域(T-E T-DMR)を同定し、これらが着床前のマウス胚盤胞(3.5日、および、4.5日胚)ではほぼメチル化されておらず、形態的なTE/ICMの分化が起こった後にそれぞれに固有のDNAメチル化プロフィールが確立されることを示してきた。今年度はさらに、着床遅延胚、接着培養胚盤胞、および、非接着培養胚盤胞についてDNAメチル化解析を行った。その結果、ほとんどメチル化されていない3.5日胚盤胞に対し、接着培養胚盤胞、非接着培養胚盤胞ではメチル化の上昇がみられ、T-ET-DMRにおける細胞系譜特異的なDNAメチル化は、体外培養胚盤胞では起こっていることが推測された。一方、着床遅延胚ではほとんどメチル化の上昇がみられなかった。着床遅延胚では形態的にも3.5日胚盤胞の状態がほぼ保たれているのに対し、培養胚盤胞では栄養膜細胞の分化が進行していると考えられることから、T-ET-DMRにおける栄養膜細胞系譜特異的なDNAメチル化は時間の経過に伴って自動的に生じるのではなく、栄養膜細胞の分化の進行に伴っているものと結論した。以上の成果をまとめ、国際誌に報告した。これに加え、マウスSry遺伝子上流領域の非CpG配列のメチル化が転写調節に関わること、および、マウスGsg2/Haspin遺伝子の発現がDNAメチル制御下にあることもそれぞれ報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1つの大きな目的であったT-E T-DMRの初期胚におけるDNAメチル化解析が完了し、細胞分化とDNAメチル化プロフィールの確立のタイミングについて、予想外の新しい発見をすることができた。さらにこの知見を国際誌に掲載することができた。
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今後の研究の推進方策 |
栄養膜細胞系列特異的なT-E T-DMRのDNAメチル化を担う新規型DNAメチル基転移酵素(Dnmt)を同定するために、既知の新規型DNAメチル化酵素(Dnmt3a、および、Dnmt3b)を欠く変異胚を用いた解析がすでに進行中である。また、Dnmt欠損胚に由来する栄養膜幹細胞株を入手している。本細胞株にDnmt3aあるいはDnmt3bを強制発現するとT-E T-DMRのDNAメチル化が回復するのかを今後解析する予定である。
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