哺乳類の生殖顆粒であるchromtoid bodyの分子構成の変化を雄生殖細胞の分化過程に沿って詳細に調べ、(1)減数分裂期の精母細胞ではchromatoid bodyとprocessing bodyは明瞭に異なったRNP構造である事、(2)同時期のchromatoid bodyはstress granuleと分子特性が類似する事、(3)半数体精子細胞ではchromatoid bodyとprocessing bodyが構造的に融合するRNPリモデリングが起こる事、(4)精子細胞の分化過程ではchromatoid bodyはaggresomeと類似した性質を示す事、等を明らかにした。またTdrd6、Tdrd7遺伝子ノックアウトマウスの解析により、Tdrd7が上述(3)のchromatoid bodyとprocessing bodyのRNP融合を制御し、Tdrd6は(4)のchromatoid bodyがaggresome様の特性を示す時期にその構造の維持に働く事、更にダブルノックアウトマウスの作製によりTdrd6とTdrd7が協調して(1)のchromatoid bodyの初期形成に必須である事を示した。これに関連して細胞内の蛋白質メチル化活性がchromatoid body構造の成立に重要である事を明らかにした。これら一連の研究によりchromatoid bodyのRNP特性の時系列変化とTdrd遺伝子による発生制御プログラムが明らかとなった。また新たに生殖幹細胞株を用いて培養下で精母細胞へ分化誘導する実験条件を探索し、体細胞型増殖から第一減数分裂前期へ同調的な移行を可能とした。同実験系は生殖細胞のin vitroにおける分化過程の解明に極めて有用である。
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