計画研究
本研究課題では、どのようにしてヒストンのエピジェネティック情報のダイナミズムが制御されているのか、そしてその制御が生命機能にどのようなインパクトを持つのかを解き明かすことを目指す。そのために、生殖系列細胞の分化・増殖をモデル系として、ヒストンメチル化修飾の役割とその制御の分子基盤を解明する。計画していた研究のうち、以下の項目に於いて研究の進展があった。1.雄性生殖細胞の発生段階で観察されるH3K9me2消失の機能の解明♂生殖細胞の発生段階では、G9aとヘテロ複合体を形成することでヒストンH3の9番目のリジンのメチル化(H3K9me)を入れる酵素GLPが転写後発現抑制を受け、結果としてH3K9me2が消失している。このヒストン修飾のグローバルな抑制の生殖細胞発生における役割を明らかにする目的で、CAGプロモーターの制御下、5'および3'非翻訳領域を持たない外来性GLP遺伝子を発現するトランスジェニック(TG)マウスを作成し、確かに外来性GLP蛋白質が全身で発現していることを確かめた。現在、このTGマウスの♂生殖細胞における表現型の詳細な解析を行っている。2.ヒストンリジンメチル化酵素ESETの生命機能における機能解析ESETの生体内における機能を明らかにする目的で、ESETのコンディショナルノックアウトマウス及び細胞株の表現型を解析した。結果、興味深いことに、ESETを胎生期の脳(前脳)で特異的に欠失させると、ESETを消失した脳細胞のうち細胞分裂期を脱出した神経細胞で特異的に内在性レトロウイルス(ERV)が活性化することが明らかとなった。さらに活性化したERVの近傍の遺伝子にも影響し、ERV-近傍遺伝子の融合転写産物が何十種類も誘導されていることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
神経系でもESETがERVの転写抑制に寄与していることを明らかにしたことは、ESETの新たな機能を明らかにした意味で重要である。
H24年度は最終年度なので、予定している研究の中で成果の出つつあるものは、極力論文としてまとめるよう努める。
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