計画研究
1.雄性生殖細胞の発生段階で観察されるH3K9me2消失の機能の解明♂生殖細胞の発生段階では、G9aとヘテロ複合体を形成することでヒストンH3の9番目のリジンのメチル化(H3K9me)を入れる酵素GLPが転写後発現抑制を受け、結果としてH3K9me2が消失している。この転写後制御の分子機構を明らかにする目的で、DicerおよびNanos2のノックアウト(KO)マウスにおいてGLPの発現が♂胚性生殖細胞でどのようになっているか、解析した。その結果、Nanos2欠損マウスの♂胚性生殖細胞では、GLPのタンパク質発現が検出できることがわかった。さらに、このヒストンH3K9me2修飾のグローバルな抑制の生殖細胞発生における役割を明らかにする目的で、5'および3'非翻訳領域を持たない外来性GLP遺伝子を発現するトランスジェニック(TG)マウスを作成した。解析の結果、このTGマウスの♂生殖細胞では、GLP(外来性)のタンパク質発現が検出され、H3K9me2のレベルも有意に上昇していることが判明した。(Deguchi et al 2013)。2.Suv39hのヘテロクロマチン形成におけるHP1の重要性の検討H3K9トリメチル化酵素遺伝子Suv39h1,2のKO細胞ではペリセントロメア領域のH3K9me3が消失し、♂KOマウスは精子形成不全で不妊となる。このSuv39hによるペリセントロメアのH3K9me3には、HP1との会合とHP1によるH3K9me3の認識が重要な役割を持つことが示唆されてきた。今回、HP1によるSuv39h依存的ヘテロクロマチン形成にHP1との会合が如何に重要かを検証するために、HP1と会合しないSuv39h欠損体がどこまでSuv39h-KO細胞のヘテロクロマチン形成を相補できるか、検討した。解析の結果、HP1のペリセントロメア局在はほとんど回復していないにもかかわらず、HP1と会合しないSuv39h自身のペリセントロメア局在とH3K9me3は相補されていることがわかった。しかし、ペリセントロメア領域の転写は不完全にしか抑制されていなかった。今回の解析により、Suv39hのペリセントロメア局在にはHP1との会合は必須ではないもののHP1のペリセントロメア局在が本来の機能的ペリセントロメアに重要であることが示された。
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