平成22年度には、以下の研究成果を得た。1.Gt12欠損が雌から伝達したときには生後4週までに必ず致死になること、逆に雄から伝達したときには50%が胎性致死になることをすでに明らかにした。そこでこれらの原因究明のため、Gt12母方欠損マウス(Dlk1の発現低下)とIG-DMR父方欠損マウス(Dlk1の発現を補正させる目的)を交配し二重欠損マウスを作出してその性状を詳細に検討した。その結果、胎性致死は完全に回避されたが、生後の致死を含む成育障害は依然解消されなかった。これらのことから、Dlk1の発現低下がGt12母方欠損マウスにおける胎性致死の原因であること、また、生後の致死性には、この領域から発現するsnoRNAおよびmiRNAが関与していることが強く示唆された。2.精子ゲノムを持たない二母性マウスの特性を明らかにするため、寿命についてデータを蓄積した。その結果、平均寿命で対象群より30%の長命性を示した。この結果は、父性ゲノムをもたない二母性マウスが寿命に関して有意な特性をもつ可能性を示唆するものである。ただし、二母性マウスではRasgrf1遺伝子の発現が抑制されており小型化していることから、長命性の直接的原因についてはさらに追究が必要と考えられる。3.Igf2の発現を欠いている二母性胚を活用したマイクロアレイ解析より、Igf2の制御下にある血管新生に係わる遺伝子群の発現を詳細に調べた。その結果、VegfおよびFlt1等の発現異常が認められたことから、Igf2が胎盤および胎児の血管新生に重要な影響を及ぼしているものと考えられた。
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