初年度である平成20年度は、配偶子のエピゲノム形成機構を明らかにするため、目的・実施計画に沿って以下の研究を行った。1、酵母2ハイブリッド法を用いて生殖細胞のde novo DNAメチル化酵素複合体(Dnmt3a/Dnmt3L複合体)と物理的に相互作用する蛋白質因子をスクリーニングし、プロ精原細胞由来ライブラリーから3つの候補因子を得た(研究分担者の秦)。2、マウス卵子や精細胞においてsiRNAやpiRNAを発見し報告した。またpiRNAの生成機構を知るため、前駆体RNAのプロセシングに関与する可能性のあるZuccini蛋白質(ヌクレアーゼドメインを持つ)の遺伝子ノックアウトマウスを作成した。現在その表現型やpiRNAの変化を解析中である。3、生殖細胞においてレトロトラシスポゾンのDNAメチル化に関わる新しい遺伝子を同定するため、ENU誘発突然変異マウスからパキテン期前後に精細胞がアポトーシスするものを選抜し、レトロトランスポゾンの活性化を指標にスクリーニングを行った(理研若菜茂晴研究室との共同研究)。これまでのところ有力な突然変異は得られていないが、鋭意スクリーニングを継続している。4、生殖細胞や初期胚において単一細胞レベルで特定配列のメチル化状態を可視化するため、制限酵素処理とLAMP法を組み合わせる方法を試みたが再現性のある結果が得られなかった。そこでオスミウムにより5メチルシトシンと錯体を形成するビピリジンを含むオリゴプローブを作成し、FISH->オスミウム処理->洗浄による検出を試みた。その結果、反復配列に関しては再現性よくDNAメチル化を検出できることが分かった。現在この方法を改良中である。
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