研究領域 | 生殖系列の世代サイクルとエピゲノムネットワーク |
研究課題/領域番号 |
20062012
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小倉 淳郎 独立行政法人理化学研究所, 遺伝工学基盤技術室, 室長 (20194524)
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研究分担者 |
幸田 尚 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (60211893)
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キーワード | 核移植 / 生殖細胞 / 胚盤胞 / X染色体不活化 / ゲノム再プログラム化 / マウス |
研究概要 |
本計画研究は、生殖細胞の全能性獲得の機構(あるいはその準備)こそが次世代にゲノムを伝える生殖細胞の本質であるとの認識をもとに、それがいつどのように生じるか、そしてその際にゲノム上にどのようなエピジェネティクス変化が起こっているかを明らかにする。昨年までに、X染色体不活化をもたらすXist遺伝子の活性X染色体からの発現が、体細胞クローンマウス胚の著しい低発生能の大きな原因であることを明らかにした。そこで、Xist mRNAに対するRNA干渉法を用いて、体細胞クローン胚の生存率が改善するかどうか検討を行った。特異的siRNAを1細胞期クローン胚(雄胚)に注入し、その発生および遺伝子発現パターンの解析を行った。その結果、siRNAによるXist RNAの抑制は、桑実期胚まで観察され、胚盤胞期には、異所性のXist発現が回復してしまっていた。しかし、これらの胚を移植したところ、着床直後の5.5日胚において、対照の10倍以上の確率で正常胚が回収できた。さらに分娩期においては、出生率も10倍以上まで改善した。この結果は、着床前のXistの異所性発現が、着床後のクローン胚の発生に決定的な影響を与えていることを示す。実際に、着床後のXist発現パターンを観察したところ、siRNAの有無にかかわらず、自然にクローン胚の異所性Xist発現は改善していた。また、昨年までに報告した、Xist非依存性にクローン胚において発現低下を示すXlrおよびMagea遺伝子群の着床後の発現を観察したところ、正常授精胚と相違は無かった。以上の結果を総合的に判断すると、体細胞クローン胚の遺伝子発現異常は着床前期まで継続するが、そのうち定型的な異常(Xist高発現、XlrとMageaの低発現)は、着床前後の再プログラム化により、発現が正常化することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
核移植クローン技術を駆使することにより、体細胞の再プログラム化においてXist遺伝子の異所性発現およびXlrとMagea遺伝子の低発現が生じることを明らかにし、Xistについては、ノックアウトおよびノックダウン法を応用して、体細胞核移植クローンの高率を薬10倍まで高めることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
体細胞クローン胚における主たる以上発現遺伝子を同定し、その改善にも成功したが、その異常が生じるメカニズムは、まだ不明のままである。24年度は、免疫沈降法などを用いて、ピストン修飾やDNAメチル化などのエピジェネティク解析を進めたい。これらの解析を進めることで、体細胞と生殖細胞のエピジェネティクスの相違、特に着床後にインプットされ、生殖細胞の発生で消去されるマーク付けがあきらかにできると期待される。
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